研究概要 |
平成16年度はMarginal Donorとして心停止肝、過小グラフトを想定し実験を行った。 1,選択的TNFα、IL1β産生抑制剤であるFR167653(FR)及びnafamostat mesilate(NM)を投与後に心停止を誘導、肝を摘出し6時間冷保存後に再潅流実験を行った。Wistar ratを(1)HB心拍動下に肝摘出(2)NHB心停止下に肝摘出(3)NM(4)FR(5)FR+NMに分けた。FR+NMにおいてNHBに比し、TNFα、IL1β、NF-κB、AP-1、TXB2、leukotrieneB4、Cox-2は有意に低値を示した。病理ではFR、FR+NMで肝類洞の微小循環障害が改善された。FRとNMの併用療法は屍体肝グラフトのコンディショニング法として有効である。 2,前述のFR、NMに加え、OP2507(PGI2アナログ)を投与後の屍体肝グラフトを同所性に移植し比較検討した。Wistar ratを(1)Control(2)FR+PG+NM(3)FR+PG(4)FR+NM(5)PG+NM(6)FR(7)PG(8)NMに分けた。生存率はFR+PG+NM、FR+PG、FRにおいてcontrolに比し有意に改善した。FR+PG+NM、FR+PGで免疫染色にて類洞内皮の抗凝固能が保たれていた。FR、PG、NMの併用投与により良好な移植成績が得られた。 3,豚を用い全肝の25%に相当する過小グラフト肝移植を行った。門脈、動脈血流を測定し生存率に及ぼす影響を検討した。門脈血流はグラフト単位重量あたり約2.4倍に増加、一方で動脈血流は減少し11例中10例が24時間以内に死亡した。門脈下大静脈シャントを作成すると門脈血流は約1/2に低下したが、一方で動脈血流は約1.5倍に増加し11例中8例が4日以上生存した。過小グラフト肝移植では過剰な門脈血流を減少させる工夫が必要と考えられた。
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