研究概要 |
実験1 目的:LPSを用いてエンドトキシン耐性(ET)を誘導できることを確認する。毒性の少ない合成のLPS receptor agonistを用いても耐性を誘導しうるか調べる。方法:RatにLPSまたは合成LPS receptor agonist(以下SLA)を前投与し、2回目に致死量のLPSを投与した際の致死率を検討する。結果:LPSによる前処置をした群は,対照群において全例が死亡する量のLPSを投与した場合,70%が生存した.SLAにて前処置をした群では,90%が生存した.結論:ETが再現した。また、SLAによってもLPSに対する致死率の改善が得られた。 実験2 目的:癌細胞の増殖促進に対する手術侵襲の影響を評価できるモデルを作成する。方法:マウスにmelanoma細胞を接種し、以下の手術を施行し、術後に腫瘍容積を測定した。A:単開腹B:肝切除C:腹膜炎モデルD:胃切開縫合E:腸管用手的刺激モデル 結果:42日目における腫瘍容積はA:2032mm^3B:2321mm^3C:2045mm^3D:6140mm^3E:6650mm^3となった。A群と比較してDにおいて有意に増大する傾向がみられた。結論:胃切開縫合モデルにおいて手術侵襲により腫瘍増大が促進することが確認された。 実験3 目的:ETを誘導した上で手術侵襲を加えると、術後の腫瘍増殖にどのような影響を与えるかを調べる。本試験 方法:マウスにmelanomaを接種し、手術(A:単開腹,B:胃切開縫合C:LPS前投与+胃切開縫合)を施行する。3.術後60日間にわたって腫瘍サイズを測定する。4.手術後の血中IL-6レベルを測定する。結果:60日目における腫瘍容積はB群と比較してC群において統計学的に有意に腫瘍増大が抑制される傾向がみられた。また、B群と比較してC群においてIL-6の術後6時間値は有意に低値を示した。結論:ET誘導により手術侵襲を軽減することで、IL-6の産生を抑制し、腫瘍増大を抑制しうることが示唆された。
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