研究概要 |
ミッドカイン(MK)は神経栄養因子活性腫瘍増殖活性,線溶系亢進能,血管新生能,細胞増殖能,細胞遊走能などをもつ,分子量13kDaのヘパリン結合性分泌蛋白である. 実験1:バルーン傷害モデルにおいてウサギMKを標的としたアンチセンスODNによる新生内膜形成の抑制効果 【方法】1)ウサギMKのクローニング:妊娠14日の日本白色ウサギの胎芽よりRNAを抽出し,塩基配列を確定した.2)アンチセンスODNの設計:ウサギMK mRNAの二次構造予測に基づき,アンチセンスODNを7種類デザインした.3)培養細胞でのアンチセンスODNの効果判定:ウサギ腎臓由来培養細胞(RK13)にリポソーム法を用いてアンチセンスODNをトランスフェクションし,その効果をウエスタンブロッティング法で判定した.4)ウサギ動脈バルーン傷害モデルにおけるMKの発現,アンチセンスODN投与によるMK発現の抑制の確認,および組織学的検討:ウサギ動脈バルーン傷害モデルにおいて,MKの発現を確認し,さらにリポソーム法にてアンチセンス、センスODNをそれぞれトランスフェクションし,MKの発現および新生内膜形成の抑制効果について検討した。 【結果】作成したアンチセンスODNのうち,RK13細胞においてMKの発現を抑制させるものが2種類存在した.ウサギ動脈バルーン傷害モデルでの検討では,7〜14日目をピークにMKの発現を認めた.アンチセンスODN投与によりMKの発現は25%に抑制され,さらに新生内膜形成が63%に抑制されることが確認された. 【まとめ】MKは新生内膜形成において重要な役割を占めており,その発現を抑制するアンチセンスODNの投与により,術後再狭窄予防への新しい治療戦略として臨床応用が期待できる. 実験2:ミッドカインを標的とした静脈グラフト内膜肥厚抑制効果の検討 目的:静脈グラフトの内膜肥厚においてMKが重要な役割を担っていることを示す.さらにMKをターゲットとしたsiRNAを静脈グラフト閉塞予防として用いることが可能であるかを検討する. 結果:静脈グラフトではMKは術後数日より発現し始め,7〜14日後にピークを迎えた.抗MK抗体を用いた免疫組織学的染色では新生内膜内にMKの強い発現を認めた. 今後は,siRNAを用いてMKをターゲットとした静脈グラフト内膜肥厚抑制効果の検討を行う.
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