研究概要 |
ステント治療や血行再建術後の再狭窄の病因として,血管内膜肥厚が重要である.我々は以前ミッドカイン欠損マウスにおいて再狭窄モデルにおける新生内膜形成が抑制され,なおかつミッドカインの全身投与により元に戻ることを示した.このようにミッドカインは新生内膜形成に重要であり,血管再狭窄の治療における分子標的として有用である可能性がある.今回我々はウサギバルーン擦過モデルに対するミッドカインアンチセンスの内膜肥厚抑制効果とウサギ頸動脈に移植した自家静脈内膜肥厚を抑制効果を検討した. 1.ミッドカインを標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチド導入による血管内膜肥厚抑制効果:作成したアンチセンスODNのうち,RK13細胞においてMKの発現を抑制させるものが2種類存在した.ウサギ動脈バルーン傷害モデルでの検討では,7〜14日目をピークにMKの発現を認めた.アンチセンスODN投与によりMKの発現は25%に抑制され,さらに新生内膜形成が63%に抑制された. 2.ミッドカインを標的としたsiRNAの徐放性投与による静脈グラフト内膜肥厚抑制効果:作製したsiRNAはin vitroにおいてMKの発現を抑制した.正常静脈ではMKの発現はほとんど認めないが,術後5日目頃より増強し,7〜14日でピークを迎えた.その発現は新生内膜および中膜が中心であった.siRNAは術後1週間でもグラフト壁内に残存しており,MKの発現は約1/4に抑制されていた.アテロコラーゲンを用いたsiRNAの投与により,新生内膜の形成が有意に抑制されており,細胞増殖および白血球浸潤も抑制されていた. まとめ:今回我々はミッドカインがバルーン障害後の頚動脈で発現を誘導されること,そのアンチセンスが発現を抑制し,新生内膜形成も抑制することを示した.また,自家静脈グラフトの内膜肥厚部位にミッドカインが発現し、MKを標的としたsiRNAのコラーゲンによる徐放性投与により,静脈グラフト内膜肥厚の抑制効果が得られた.これらのデータは,ミッドカインが再狭窄予防の分子標的となりうることを示唆していると思われた.
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