研究分担者 |
林 純 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (20150443)
居石 克夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (70108710)
田中 雅夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30163570)
野瀬 善明 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (20038920)
稲葉 頌一 九州大学, 大学病院, 講師 (90091305)
|
研究概要 |
現在ワクチン療法などに用いられている腫瘍細胞の多くは、自己腫瘍細胞といえども細胞培養の課程で牛胎児血清などの異種血清に接触した可能性が高く、かつ他の人に応用するための文書での同意が得られていないという多くの問題を含んでいる。今後、これらは未知のウイルス感染や個人情報の面からさらに大きな社会問題となると予想される。したがって、「治療に特化した質の高い安全な治療用腫瘍細胞バンク」を創世を目的として、本年度の計画案に沿って研究成果を概説する。 1)治療法腫瘍細胞株の樹立法の開発:計画では、治療用腫瘍細胞樹立に対する同意を得た後に腫瘍細胞の樹立を行うこととしていたが、末期進行癌患者さんが対象となり、細胞株樹立の確立が必ずしも高くない現状を考慮し、「腫瘍細胞の樹立」に同意を得た患者さんから、細胞樹立後改めて「他の患者さんに対する治療用腫瘍細胞として利用する」ことに対する文書で同意をする方法に改めた。本年度は、癌性胸腹水患者さん16名からの腫瘍細胞樹立を試み、うち2名から「治療用細胞としての腫瘍バンク」への登録の承諾を得、さらに4例を培養中である。現在、癌性胸腹水から必ずしも細胞株として樹立できない腫瘍細胞も大量に獲得された腫瘍細胞分画を治療用腫瘍細胞の一つとして登録保存するシステムも試験的にスタートした。 2)病原体検査システムの構築:患者の同意を文書で得た後、個人が特定できないようにランダムNo表示のサンプルとして共同研究組織の検査部へ送付し、HB,HCV,HIV,EBV,梅毒,マイコプラズマ,一般細菌のないことを確認後、カルテから基本情報を取得し、個人が特定できないように、基本情報、細胞をランダムNo表示に変更し、上記2症例を治療用細胞として凍結保存した。 3)治療用腫瘍細胞の凍結保存システムの構築:凍結保存細胞の一部を3ヶ月毎に融解し、再増殖させ増殖細胞の生物学的特性をチェックしているが腫瘍関連抗原蛋白の発現強度やプロファイルに特別な変化を認めていない。 4)治療への応用:次年度の予定であったが、治療中の患者自己腫瘍細胞を使い切ったため、患者の要望と、バンク腫瘍細胞が本患者さんに免疫学的に適応可能であると判断されたため、「他家腫瘍細胞による免疫監視機構構築療法(九大倫理委員会平成14年承認)」の一例目を実施中である。
|