研究課題
インスリン依存糖尿病の根治的治療法として、膵島移植の臨床応用が開始されている。膵島移植はインスリン産生細胞(膵島)を移植に用いる細胞移植療法で、膵臓器移植に代わる、侵襲の少ない安全な治療法として、今後の発展が切望されている。膵島移植が直面する最も重要な課題は、一人の糖尿病レシピエントの治療成功に2-3回の膵島移植、すなわち2-3人分のドナー膵臓を必要とする事が挙げられる。この間題は移植した膵島が種々の原因で障害、破壊され、一回の移植のみでは機能する膵島数が不足し、レシピエントをインスリン治療から離脱するためには、結果として複数回の膵島移植を要することに起因している。この問題が現在の膵島移植の最大障壁となっており、解決法が見出され、一人のドナーより一人のレシピエントへの移植が可能となればブレイクスルーとなり、臨床膵島移植の一層の発展が期待できる。移植膵島障害の制御にはその機序の解析が必須である。その原因としては臓器移植とは異なった細胞移植特有の因子、特に膵島単離、移植直後の生着、拒絶反応による移植膵島障害、さらには免疫抑制剤による膵島β細胞障害を考慮する必要がある。本研究では膵島移植直後の生着に関連した膵島障害に着目、その機序を解析し、制御法の開発を試みた。その結果、新に発見された免疫担当細胞、ナチュラルキラーT (NKT)細胞が移植後早期の生着に伴う膵島障害(JEM 202:913-918,2005)ならびに同種膵島移植拒絶反応(Diabetes56:34-39,2006)に必須の役割を担っている事を見出した。いずれも新たな視点より移植膵島障害機序を明らかにしたもので、その制御法の臨床応用により一人のドナーより一人のレシピエントヘの膵島移植成功が達成できる可能性が示唆された。
すべて 2006 2005
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Diabetes 56・1
ページ: 34-39
Journal of Experimental Medicine 202・7
ページ: 913-918
Med Mol Morphol 38・1
ページ: 30-35