研究概要 |
D2定型手術を行った早期胃癌126例を対象に、術中胃内視鏡下に色素によるlymphatic mapping(IELM)を行い、IELMによる青染リンパ節(blue node,BN)と、郭清後の術後病理検査によるリンパ節とにおける転移診断能を比較した。IELMは2%patent blueを、癌の周囲4箇所に0.2mlずつ粘膜下注入し、15〜20分後に見出せるBNを迅速病理診断に提出した。またIELMにより染色されるリンパ節、リンパ管を含む流域をlymphatic basinと定義した。IELMは119例(94%)に成功し、BN個数の中央値は6個であった。感度87%(34/39)、特異度100%(80/80)、正診率96%(114/119)であった。5例がfalse negativeであったが、4例は肉眼的転移例で術中に容易に判定され、1例は迅速病理の誤診であった。転移状況は、BNのみへの転移、BNを含むlymphatic basin内の他のリンパ節への転移がほとんどでBNとbasin外のリンパ節への転移は1例のみであった。微小転移の検討は、免疫組織化学とRT-PCR法により施行した。抗CK8/18抗体による免疫染色法ではHE染色にて転移のない35例、1028個のリンパ節について、連続切片を作製しにより検討した。微小転移は、症例別では11%(4/35)、リンパ節別では0.58%(6/1028)に認められた。しかし、いずれもBNのみまたは、BNと非BNの両者にみられ、非BNのみに見られることはなく、Sentinel node conceptは成立していた。またCEAとCK19によるRT-PCRでは、HE染色にて転移のない20例のうち6例(30%)に転移が認められたが、同様にBNのみか、BNと非BNの両者にみられ、非BNのみには見られなかった。以上の成績から、lymphatic basinを郭清しその中のリンパ節に転移が見られなければ以後の郭清は必要ないと結論され、そのような症例に縮小手術を施行した。縮小手術の胃分節切除術(分節群)51例と、標準手術の幽門側胃切除術Billroth I法再建術(B-I群)61例の成績を比較した。術後の食事摂取量は、術前の8割以上の摂取ができる例は分節群80%とB-I群67%に比べて良好である傾向を示した。ダンピング症状(全身症状)は、分節群は5%とB-I群の18%に比較して有意に良好であった。体重比(術後/術前)は、90%以上の回復を認めた症例は、分節群78%とB-I群66%に比べて良好であった。内視鏡検査所見では胆汁逆流と粘膜の発赤が、分節群0%,46%、B-I群41%,82%といずれも分節群で有意に低率であった。以上よりsentinel node生検による胃癌の縮小手術は、根治性を保ちながら機能を温存しうる術式と考えられた。
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