研究概要 |
早期胃癌126例を対象に、術中胃内視鏡下に色素によるlymphatic mapping (IELM)を行った後D2定型手術を施行、IELMによる青染リンパ節(BN)と、術後病理検査によるリンパ節とにおける転移診断能を比較した。IELMは2% patent blueを用いて行い、IELMにより染色されるリンパ節、リンパ管を含む流域をlymphatic basin (LB)と定義した。IELMは119例(94%)に成功し、感度87%(34/39)、特異度100%(80/80)、正診率96%(114/119)であった。5例が偽陰性であったが、4例は肉眼的転移例で術中に容易に判定され、1例は迅速病理の誤診であった。転移状況は、BNのみへの転移、BNを含むLB内の他のリンパ節への転移がほとんどでLB外のリンパ節への転移は1例のみであった。微小転移について抗CK8/18抗体による免疫染色法により、HE染色にて転移のない35例、1028個のリンパ節を用いて連続切片を作製し検討した。微小転移は、症例別では11%(4/35)、リンパ節別では0.58%(6/1028)に認められた。しかし、いずれもBNのみまたは、BNとLB内の非BNの両者にみられ、LB外の非BNのみに見られることはなく、sentinel node conceptは成立していた。以上の成績から、LBを郭清しその中のリンパ節に転移が見られなければ以後の郭清は必要ないと結論され、そのような症例に縮小手術を施行した。縮小手術のうち胃分節切除術(分節群)51例と、標準手術の幽門側胃切除術Billroth I法再建術(B-I群)61例の成績を比較した。術後の食事摂取量は、術前の8割以上の摂取ができる例は分節群80%とB-I群67%に比べて良好である傾向を示した。ダンピング症状(全身症状)は、分節群は5%とB-I群の18%に比較して有意に良好であった。体重が術前の90%以上の回復を認めた症例は、分節群78%とB-I群66%に比べて良好であった。内視鏡検査所見では胆汁逆流と粘膜の発赤が、分節群0%,46%、B-I群41%,82%といずれも分節群で有意に低率であった。以上よりsentinel node生検による胃癌の縮小手術は、根治性を保ちながら機能を温存しうる術式と考えられた。 また直腸癌では脂肪層が厚く肉眼観察に不向きなためRIで検討した。方法は胃癌と同様に、術前日内視鏡下に99mTcフチン酸を癌の周囲に注射し、術中にγ-probeを用いてhot nodeを検索した。計43例に施行し深達度が粘膜下層までの症例に限ると、成功率は96%(25/26)、感度80%(4/5),特異度100%(20/20),正診率96%(24/25)であった。しかし筋層以深の症例では6/17に偽陰性例がみられ、方法の改善が必要と考えられた。
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