研究概要 |
胃癌においてHER-2がCTLに認識されるエピトープであることを報告し、癌ワクチン療法にてその免疫原性を確認してきた。また、抗HER-2モノクローナル抗体であるHerceptinが、胃癌細胞に対してADCC活性を有することも報告してきた。そこで今回の申請研究において、HerceptinのADCC活性以外の新しい機序につき検討した。胃癌患者より、MHC class I拘束性、HER-2特異的CTLを誘導し、HER-2陽性癌細胞targetをHerceptinにて前処置し、そのCTL活性を51Cr放出試験で検討する。その際、Herceptin前処置による、targetのclass I分子発現、接着分子(ICAM-1)発現の変化をflowcytometerで、classI抗原呈示関連分子(TAP-1,LMP-2)の変化をwestern blotで検討した。結果として、HER-2陽性癌細胞をHerceptinで前処置することにより、MHC class I拘束性、HER-2特異的CTLによる細胞障害活性は増強した。このCTL活性の増強は、Herceptin前処置の際にproteosome inhibitorの存在下で阻害された。また、Herceptin前処置によって、targetのclass I分子発現、ICAM-1発現、TAP-1,LMP-2の各発現に有意差はなかった。この結果より、Herceptinは、HER-2陽性癌細胞におけるHER-2エピトープのclass I拘束性抗原呈示をup-regulateし、HER-2陽性癌細胞のCTL感受性を増強することが判明した。この新しいHerceptinの作用機序は、HER-2を分子標的とした免疫療法において、抗体療法と癌ワクチン療法が相乗効果をしめすことを示唆する、極めて重要な知見と言える。
|