研究概要 |
消化器癌においてHER-2がCTLに認識されるエピトープであることを報告し、癌ワクチン療法にてその免疫原性を確認してきた。また、抗HER-2モノクローナル抗体であるHerceptinが、胃癌細胞に対してADCC活性を有することも報告してきた。また、本研究の昨年度の成果により、Herceptinは、HER-2陽性癌細胞におけるHER-2エピトープのclass I拘束性抗原呈示をup-regulateし、HER-2陽性癌細胞のCTL感受性を増強することも発見し報告してきた。今年度は、昨年度の知見をもとに、HER-2を分子標的とした免疫療法において、抗体療法と癌ワクチン療法の併用が相乗効果をしめす否かを検討するために、HER-2癌ワクチン療法どHerceptinの併用療法を実施した。胃がん、食道がんの再発例(他治療無効例)で、腫瘍がHER-2を発現し、HLA-A2あるいはHLA-A24陽性である6例を対象とし、HER-2ペプチド+樹状細胞による癌ワクチン療法とHerceptinの併用治療を実施した。画像診断上2例にPR、1例にNC,3例がPDであった。6例全例において、併用療法後に、Elipost, tetramer assayともにHER-2抗原に対する免疫反応が増強していた。この現象は、以前のワクチン単独療法よりも、明らかに抗原特異的免疫反応が増強しており、抗体療法と癌ワクチン療法の相乗効果を示唆する、極めて重要な知見と言えた。
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