研究概要 |
全身に発現するのではなく、肝臓にヒトRb遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作製し、2系統のトランスジェニックマウスを得た。A系統のマウスはトランスジーンを1倍体あたり11コピーもち、B系統のマウスは1倍体あたり4コピーのトランスジーンをもっていた。 野生型マウス、A系統マウス、B系統マウスの4週齢雄にジエチルニトロサミンを腹腔内投与し、その後フェノバルビタール含有水を35週にわたり飲水させた。肝臓の標本を作ったところ、コントロールマウスの肝臓には肝細胞癌が出現していたが、AおよびB系統のRbトランスジェニックマウスには肝細胞癌は誘導されていなかった。コントロールマウスの肝細胞癌部からDNAを抽出し、Rb、p53、Ras、Myc遺伝子の欠失や突然変異を検索したが、変異を検出できなかった。また、1肝臓あたりの結節形成数はコントロールマウスが一番多く、次がB系統マウスであり、最も数が少なかったのがA系統マウスであった。このことは、結節形成にRb蛋白質が量依存的に抑制していることを示している。 劇症肝炎抵抗性を担っている分子の解析を肝臓抽出液を調製し、ウエスタンブロット法にて検索したところ、カスペース1,カスペース3、p53,E2F1-E2F5,Bcl-2,Bcl-XL,Bcl-XS,Bad,Bid蛋白に変化がなかったが、Bax蛋白がトランスジェニックマウスでは野生型マウスに比し著明に減少していることが判明した。さらに、2次元SDS-ポリアクリルアミドゲルでもって検討した。野生型マウスの肝細胞抽出液には存在せずA系統マウスの肝細胞抽出液に存在する蛋白スポットを5個、逆に野生型マウスの肝細胞抽出液には存在しA系統マウスの肝細胞抽出液に存在しない蛋白スポットを7個同定した。これらの分子は劇症肝炎抵抗性を担う分子の可能性が高く、現在分子の同定を行っている。
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