研究概要 |
腹腔鏡下手術が癌の増殖、進展に及ぼす影響について基礎実験と臨床サンプルを用いて検討した。 I.肝転移、腹膜播種、リンパ節転移に及ぼす気腹の影響 1.肝転移に対する影響 肝転移に対し、二酸化炭素気腹が及ぼす影響について、脾注肝転移モデルを用いて検討した。気腹群は対照群に比べ、多くの肝転移個数が認められた。その原因は気腹による門脈血流低下と肝虚血に伴う肝内血管お接着因子であるICAM-Iの発現の上昇(Surg Endosc 19:1049-1054,2005)、及び二酸化炭素気腹による肝血管内皮細胞の形態変化(不整や開裂)(Surg Endosc 19:1049-1054,2005)と考えられた。 2.腹膜播種に対する影響 マウス盲腸逢着モデルを用いて腹膜播種形成に及ぼす二酸化炭素気腹の影響について検討した。気腹群では開腹群と比べ腹膜播種の形成が軽度であり、その原因として開腹群で腫瘍内の接着分子(E-cadherin mRNA)の発現が低下していることをRT-PCRにて明らかにした。(Surg Endosc 18:1795-1799,2004)。 3.リンパ節転移に対する影響 会陰部から後腹膜腔内へ癌細胞を移植し、腹腔内リンパ節転移モデルを確立した。(Oncol Reports 12:115-118,2004)。また同モデルを用いた検討では、二酸化炭素気腹を行った群では開腹群と比べ、リンパ節転移形成が低いことを証明した(論文準備中)。 II.進行大腸癌の臨床サンプルを用いた手術侵襲の検討 現在までに、進行大腸癌に対する腹腔鏡下手術と開腹手術の無作為化比較試験登録症例を中心に開腹群15例、腹腔鏡群15例の大腸癌患者の末梢血サンプルを収集した。今後、手術侵襲や末梢血癌細胞散布の観点から、解析を継続する予定である。
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