研究課題
基盤研究(B)
RUNX遺伝子ファミリーは、遺伝子発現調節をつかさどる転写因子であり、白血病や骨形成異常などヒト疾患に深く関わる重要な遺伝子群である。近年RUNX3遺伝子のノックマウスの胃粘膜病変が明らかとなり、胃癌発生と進展におけるRUNX3遺伝子の関与が示唆された。胃癌臨床検体92例における原発巣、腹膜転移巣でのRUNX3発現変化及びプロモーター領域のメチル化を調べた。さらにRUNX3遺伝子導入による腹水胃癌細胞の転移形成能の変化とDNAチップを用いた下流遺伝子群の解析を行った。【結果】RUNX3の発現低下は約65%に認められた。RUNX3発現低下は分化型胃癌、未分化型胃癌いずれにおいても認められ、進行度と有為の相関を認めた。胃癌腹膜転移巣では100%のメチル化による発現低下を示した。腹水胃癌細胞株KATO-IIIにRUNX3遺伝子を導入し、stable transfectant 4クローンを得た。これらはマウス腹膜転移モデルにおいて腹膜転移を形成しなかった。これらDNAチップ(約2300遺伝子)を用いてこれら4クローンに共通して発現亢進、発現現弱している遺伝子を約20種類同定した。この中には腹膜転移への関連が知られているMETなどが含まれていた。これらの遺伝子群のヒト正常胃粘膜、癌部、腹膜転移巣における発現をノザン法、定量PCR法にて確認した。【考察】RUNX3の発現低下により胃癌細胞はアポトーシス耐性を獲得することが知られている。RUNX3遺伝子は、胃癌発生のみならず、胃癌の転移浸潤、さらに腹膜転移においても重要な働きをしている可能性が示唆された。
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