研究概要 |
【目的】新生児開心術時における心筋保護法の開発のため、未熟心筋の虚血再潅流傷害発生機序を解明すること。未熟心筋で活性の高いNa/H交換機構、Na/Ca交換機構の虚血再潅流傷害に対する関与を評価した。 【方法】生後3から5日の家兎摘出心のLangendorff灌流を用いて、虚血再潅流実験を行った。左室内バルーンで心機能の評価を行い、20℃180分のSt.Thomas液による心筋保護心停止、45分間の再灌流実験を行った。Na/H交換阻害剤(amiloride)を心筋保護液に添加し、薬剤の心筋保護効果を心機能の回復、CK遊出量を測定し対照群と比較検討した。 【結果】Amiloride O.01,0.1,1mMの添加により未治療群に比し心機能の回復は改善され(84.1±4.4%,77.2±2.7%,78.3±3.0%,vs.50.7±4.0%)た。CK遊出量は0.01,0.1mM(12.9±4.8,11.1±4.1vs.41.5±12.5 IU/g/15min)で軽減したが、1mMでは差がなかった。Amiloride 0.01,0.1mMの濃度ではNa/H交換機構が阻害されNa/Ca交換機構は1mM以上の濃度で阻害されるので、未熟心筋の虚血再潅流傷害発生にNa/H交換機構は傷害的に、Na/Ca交換機構は保護的に作用している可能性が示唆された。新生児心筋保護液にNa/H交換機構を阻害する低濃度(0.01mM)のAmilorideの添加は、心筋保護上有益である可能性が示唆された。
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