研究概要 |
1)心尖部温存左室縮小術の臨床的検討. 平成15年4月より平成18年3月までに当院で施行された左室縮小形成術(LVR)は39例で,拡張型心筋症12例・虚血性心筋症は27例であった.緊急手術7例・待機手術32例で術後に失った症例は5例(緊急2例・待機3例)であった.LVR全体の検討から、左室拡張末期径は術後有意に縮小され、収縮率及びNYHAクラスも有意な改善が見られた.虚血性心筋症症例での心尖部温存効果の検討では、心尖部温存術式は非温存術式との比較において左室拡張末期径の有意な縮小と心機能の有意な改善をみとめ、左室形の評価にてもだ円形を呈していることが認められた. 2)心筋症モデルを用いた肝細胞増殖因子(Hepatic growth factor:HGF)徐放シートの有効性の検討. ルイスラットにミオシン抗体を誘導した自己免疫性心筋炎を作製した後、6週間で拡張型心筋症を形成するモデルを使用した.このモデルを用いてHGF徐放が心筋の組織に対してどのような効果をきたしているかを検討した.モデル心筋のFree-wallにHGF徐放シートをあてた群(A群)とHGFを含有していないシートをあてた群(B群)に分け,2週間後に生理学的・組織学的評価を行った.心エコーによる生理学的評価では,A群においてLVSdの有意な低下とFACの有意な上昇がみられた.組織学的検討からA群ではB群との比較において,Fibrosis areaは有意に低く,Vascular densityは有意に高値を示した.Tissue Endothelin levelは有意に低く、Bax/Bcl-2 ratioも有意に低値を示した.以上の結果からHGFの徐放は心筋組織に対してApoptosis及びFibrosisの抑制作用があり,血管申請作用を促進することが示唆された.この効果により再拡大を抑制し,心機能の改善効果を導くものと考えられた.
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