研究課題
2004年度には比較的単純な先天性心疾患である心房中隔欠損症8例に対して、手術支援ロボット「ZEUS Surgical System」を導入し、手術時間の短縮、在院日数の短縮を認め、良好な成績であった。しかしながら2例で術中に従来の開胸手術に移行せざるをえなかった。これは現在のシステムでは把持力等の情報が両方向性ではなく一方向性であるため、繊細な操作に限界があることに起因する。また冠動脈バイパス術5例において左内胸動脈の採取に使用し、大きな問題を認めなかったが、採取範囲が不十分でありまた患者の体位と支柱の位置関係に課題を認めた。今後はこれらの経験を踏まえたシステムの改良、およびトレーニングシステムの構築が必要である。近々次世代手術支援ロボット「ZEUS surgical system MICRO-WRIST」を導入予定であり、この新システム導入によって、これらの問題点の多くは解決されるであろうと期待される。また当施設内未来医療センターに内視鏡手術トレーニングセンターが近々開設されることとなった。他のシステムを導入している他教室とも連携し、今までの研究で得られた成果を交換、発展させることができる環境が整いつつある。これらの成果は日本外科学会をはじめ、日本内視鏡外科学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、その他の研究会で報告してきた。将来的にはより複雑な先天性心疾患である心室中隔欠損症や、僧帽弁手術などにも応用できると考えている。