研究概要 |
近年COは重要な細胞内伝達因子と考えられ、細胞内cGMPを増加させ血管内皮の虚血再潅流障害を軽減すると知られている。この効果をCO吸入したラット同種肺移植モデルで検討した。0.1%のCOを12時間吸入したドナーラットから摘出後6時間の低温保存を行った移植肺は非吸入群の摘出保存肺に比し有意に良好なガス交換能を維持(PaO2=300±50mmHg vs 120±50mmHg, p<0.05)、肺血管抵抗は1/8に低下、肺血流も増加、良好な肺循環を維持できた。結果CO吸入移植肺は非吸入群に比し生存率は高かった(100%vs25%,p<0.05)。同様の実験をドナーラットに対するCOの吸入時間・濃度を変化させ行い、結果0.1%以上のCOを吸入したドナーラットでは50%が吸入中に死亡。吸入濃度を低下させると容量依存性に移植肺の生存率は低下。また吸入時間を12時間以上に延長するとドナーラットの50%が吸入中に死亡。吸入時間を低下させると時間依存性に移植肺の生存率は低下した。このCOの虚血再潅流肺保護に対するCOのメカニズムを分析するために細胞内cGMP濃度の他にサイトカイン、ストレスタンパクの解析を行い、CO吸入群でドナー肺のHO-1,HSP70、cGMPの増加を認めた。以上よりCOの肺保護作用にはcGMPに加えストレスタンパクの関与が考えられた。そこでこのCO効果を我々が行ってきたラット心臓にて検討した。CO吸入のドナー心への影響を検討するに先立ち、LPSによって産生されるIL-8・TNF-αのサイトカイン、LPSによる急性肺障害を抑制するJTE-607を用いて検討した。COの移植肺における有用性が証明され、さらにストレスタンパクの関与が示唆された。一方で肺に有用なメカニズムも、心臓の虚血再灌流障害にも有用であり、これらの関連性が証明された。
|