研究概要 |
本研究は、新規T細胞副刺激分子PD-1リガンド(PDL-1,PDL-2)による免疫抑制効果の移植免疫寛容誘導への応用可能性を検討するために、PDL-1,PDL-2を含めた5種のB7ファミリー分子を発現する組み替えアデノウイルスを作成し、これを利用して各種アデノウイルス感染のアロ免疫応答への影響に関して検討し、以下の成果を得た。 1.B7.1,B7.2,PDL-1,PDL-2,ICOS ligand cDNAを組み込んだ、E1/E3欠損非増殖型組み替えアデノウイルスの作成に成功した。特にPDL-1,PDL-2は新規分子で、これを発現するアデノウイルスはこれまで報告されておらず、新しい研究リソースとなる。 2.作成したアデノウイルスは骨格筋筋芽細胞、HeLa細胞など付着性培養細胞には効率よく感染し、目的分子を細胞表面に強く発現誘導したが、アデノウイルス受容体遺伝子トランスジェニックマウスを用いても、浮遊細胞への感染と目的分子の発現誘導は困難であった。 3.したがって、当初予定したアロ細胞静脈内投与による免疫寛容誘導法を本アデノウイルスの使用でさらに発展させる事を目的とした研究は施行せず、ウイルス投与後の宿主のアデノウイルス抗体産生量を測定することで5種のB7ファミリー分子の生体内機能を検討したところ、PDL-1が免疫抑制効果を持つことが示唆された。ただし、その効果は既に報告されているCD28のリガンドCTLA4-Igの効果より弱いことが明らかになった。 4.傷害心の機能回復を目的とする新しい自己骨格筋筋芽細胞移植法としてシート移植法を考案し、ラットにおいて成功した。本法にPDL-1を発現誘導することで、今後アロ骨格筋筋芽細胞による傷害心の機能回復法が可能となる可能性があると考えられた。
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