研究課題/領域番号 |
15390416
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
青江 基 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (80260660)
|
研究分担者 |
舟久保 昭夫 東京電機大学, 理工学部, 助教授 (00307670)
伊達 洋至 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60252962)
佐野 由文 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (60322228)
豊岡 伸一 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (30397880)
|
キーワード | 液体呼吸 / 液体換気 / 呼吸補助 / 全液体呼吸 / 完全液体呼吸 / パーフロロカーボン |
研究概要 |
本年度の研究では完全液体呼吸において、さらに至適呼吸条件の検討に耐え得る正確な制御が可能なパルス駆動ステッビングモータを用い、生体肺に損傷を与えない安全性に優れたシステムの開発を目的とした。呼吸条件は通常のガス呼吸器と同様に、一分間の呼吸回数、吸気呼気時間比、一回換液量が制御可能な従量式とし、PFCの流量を制御する。また、モータの制御はPCにより作製したプログラムで行う。制御用ソフトウェアには、パラメータの変更やデータの送受信が容易なLabView(National Instruments社)を用いた。肺損傷を予防するフィードバックとしては、肺容量が同じでも肺疾患患者では肺コンプライアンスが低下している可能性があるため、同じ換液量でもコンプライアンスが正常な部分に予想以上に高い圧力がかかり、過拡張による肺損傷の危険性がある。そのため、気道内圧の上限値を設け、その値に達すると一回換液量を満たしていなくても吸気から呼気に移行するようにした。さらに、PFCは揮発性が高いため人工肺の中空糸膜を介して大気へと揮発し、時間の経過と共に循環回路のPFC充填量が徐々に減少する。循環回路が閉鎖回路であるため充填量が減少すると回路内圧が低下し、回路内でコンプライアンスの高い気道が狭窄し、肺が潰れる危険があるため気道内圧を測定し、その値を指標にピストンポンプの駆動状態を制御するプログラムを作成した。肺損傷予防プログラムでは、気道内圧が上限値の15mmHgを上回った直後に吸気から呼気へ移行し、下限値の-5mmHgに達した直後呼気から吸気へと切り替わり正常に動作していることが確認された。しかし、設定した気道内圧上限値と実測した気道内圧との差が3.7mmHg生じた。吸気から呼気(呼気から吸気)に移行してもそれまでに注入(排出)されていたPPCの慣性力により肺が拡張(縮小)し、このような差が生じたと考えられた。気道狭窄予防では、プログラムにより気道内圧が-5mmHgを下回ると予め充填しておいたポンプ内のPFCが自動的に補充され、気道内圧が-6.5mmHg以下になることは無かった。その結果、気道内圧が急激に低下する現象は生じず、また、肺内のPFC充填量は一定量に維持された。まとめに、本研究では小型化かつ生体肺に損傷を与えない安全性に優れたシステムの開発を行い性能評価を行った。作製した2つの気道内圧制御プログラムの動作確認を行なったところ、全てのプログラムが正常に動作することが確認された。今後の問題点としては、肺損傷予防プログラムにおいて、気道内圧上限下限値の設定値と実測値差が生じたため、今後検討が必要であると考えられた。また、狭窄予防プログラムにおいては、充填するPFCの揮発する量の算出が必要であると考えられた。細部の検討はさらに必要ではあるが、今回我々が開発したTLVシステムは、気道や肺にかかる圧力負荷を低減するプログラムとして有用であると示唆された。
|