研究概要 |
異種移植が同種移植における提供臓器の不足を補うための究極の移植手段であることは議論の余地のないところである。しかし、Discordant異種における最大の問題点は超急性拒絶反応であり、それを引き起こすrecipient生体内に存在する自然抗体(抗αGal抗体)をどう抑制するかが異種移植成功のための大きな鍵となっている。我々は、これまでにCyclophosphamide(CP)を用いた免疫寛容誘導系を開発し、報告してきた。同種脾細胞(SC)1X10^8投与2日後にCP200mg/kg及びBusulfan(BU)(30mg/kg)を投与し、その翌日に1X10^7同種骨髄細胞(BMC)を追加することでMHC抗原不一致の組み合わせに多いてもドナー特異的免疫寛容を誘導することを報告してきた。今回レシピエントにGal-α(1-3)Gal抗原に対して自然抗体の存在するαGal K0マウスを用い、これまでのプロトコールを応用してαGal抗原に対するB細胞免疫寛容の誘導を試みた。(方法)αGal K0(H-2b/d)をレシピエントに、AKR(H-2k)をドナーとした。無処置群(G1)、SC投与群(G2)、SC+CP投与群(G3)、SC+CP及びBU+BMC(2X10^7)施行群(G4)の4群にてキメリズム、抗αGal抗体産生B細胞の動態及び抗αGal抗体を観察。さらに皮膚移植(SG、心移植(HG)を施行した。(結果)G1では、抗αGal抗体IgM分画のみ認め、G2ではIgM, IgGl, IgG2aの上昇を認めた。G3, G4では抗αGal抗体は認められなかった。HGはGl, G2で急性拒絶され、拒絶心の病理所見では液性拒絶が観察された。G3では平均30日で拒絶され、拒絶心移植片には液性拒絶は観察されなかったが、細胞性拒絶が観察された。SGはG1,G2,G3で10日以内にすべて拒絶された。G4では細胞性拒絶も認めず、キメリズムと皮膚移植片、心移植片の永久生着を認めた。(結論)1.Conventional protoccol : SC+CPにてαGal抗原で前感作を受けているマウスにおいても抗αGal自然抗体の産生を抑制でき、B細胞寛容及び心移植片の生着延長を得た。しかし、細胞性拒絶は生じており、キメリズムや移植片の永久生着すなわちT細胞寛容は誘導できなかった。2.New protocol : SC+CP/BU+BMCにてB細胞寛容及びキメリズムを誘導でき、さらに皮膚及び心移植片の永久生着すなわちT細胞寛容を誘導することができた。
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