既手術の雑種犬(14〜16kg)から採取してあった10軟骨輪長の縦隔気管を多数、-82.Cで保存してきた。これを37℃の温浴で急速解凍、次にノニオン系界面活性剤で処理し、組織内構成細胞ならびに各種蛋白質を完全除去し、無細胞化した。そして乾熱滅菌装置で滅菌処理、次に凍結乾燥機で真空乾燥させ、長期保存可能な状態とし、移植時は滅菌蒸留水にて膨潤させ、内腔に別に作製したステンレス製スパイラルステントを挿入、内腔の形態を保持し気管Scaffoldとした。このScaffoldを犬縦隔気管切除部へ移植し、有茎大網弁で全周性に被覆した。 Scaffold単独群をコントロールとして4頭に移植実験を行ったところ、3頭は一ヶ月目から急激なScaffold内腔の狭搾がみられ、2ヶ月目には気道開存率が10%以下となり犠牲死とした。残る1頭は術後4ヶ月まで、狭搾無く生着したが、絞扼性イレウスで失った。3頭の急激な狭搾原因としてScaffoldに抗原性が存在するとの仮説のもと、3頭追加手術を施し術後免疫抑制剤を投与した。しかし同様に狭窄が見られた。 2005年度、赤外光観察が可能な拡大気管支鏡を導入した。無細胞処理改良の間、気管Scaffoldとして吸収素材を導入、犬縦隔気管への移植を5頭行い拡大気管支鏡による血管新生の状態を赤外光システムにより観察を行った。インドシアニングリーンを静脈内投与し、約1分以内に生体気管表面の血管を観察した。同様に移植気管内腔表面の新生血管を観察したところ、ScaffoldのPore付近に新生した血管を観察するとNative気管と同じ様に約1分以内で観察された。 2006年度、界面活性剤での脱細胞化の時間や凍結乾燥法を改良した気管Scatfoldを作製しさらに、内腔狭搾予防の止めPoly-L-Lactideでステントを作製し、これを移植後一ヶ月に挿入した。このプロトコールで4頭の移植実験を行い、術後6〜8ヶ月経過観察中であるが内腔は比較的良好に保持されており、長期開存が期待される。
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