研究概要 |
平成16年度の神経膠芽腫の浸潤性増殖に及ぼすグルタミン酸を介するシグナル伝達機構のin vivoにおける解析結果の概要。 前臨床試験に使用する疾患モデルは研究代表者が独自に樹立したCGNH-89を用いた。CGNH-89細胞はグルタミン酸受容体を発現するヒトの神経膠芽腫モデルであり10^7の細胞をヌードマウス皮下に移植すると100%のtumorigenicityを示し、3週間で腫瘍体積が2000mm^3前後に増大する。組織型はオリジナルの腫瘍を模倣し定型的な神経膠芽腫の組織像をとる。すなわち、necrosis with peudopalisading, microvascular proliferation, appearance of giant cellsを呈し、またグリア細胞のマーカーであるGFAPが陽性である。脳内移植では、2x10^5の細胞を移植すると4週間で100%腫瘍死することが知られており、またヒト腫瘍の特性を保持し、髄鞘線維やVirchow Robin腔に沿って浸潤するするため前臨床試験に使用する疾患モデルとして有用であることが判明した。このnude mice modelにおいて実際Aktを構成的活性や優性阻害して腫瘍の増殖の変化を解析した。腫瘍移植5日目に組み替えアデノウイルスをベクターとしてAktno構成活性型遺伝子(Akt-HA)優性阻害型遺伝子(Akt-AA)を投与しその増殖態度を移植23日目にコントロール群と比較検討した。その結果構成活性遺伝子組み込みアデノウイルス(Akt-HA)投与群において腫瘍の増殖元進がまた優性阻害遺伝子組み込みアデノウイルス(Akt-AA)投与群においては腫瘍の縮小が認められAktの活性化が腫瘍の増大に直接関与することをin vivoにおいて証明した。さらに病理学的解析を行うと、Akt-HA群において腫瘍内出血が高頻度に認められ、また分裂像や核・細胞比の上昇、多形性などの退形成の所見の増強が認められた。一方Akt-AA群においてはAKtの脱リン酸化の促進とアポトーシスの増加を認めた。これらの所見はヒト神経膠芽腫においてAktの脱リン酸化が治療上、分子標的療法の目標として極めて重要であることを直接証明したものと考えられる。
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