研究課題/領域番号 |
15390432
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山嶋 哲盛 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60135077)
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研究分担者 |
小川 智 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90283746)
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キーワード | 一過性脳虚血 / 海馬 / 神経再生 / 神経幹細胞 / BDNF / PSA-NCAM / 歯状回 / CA1 |
研究概要 |
虚血性神経細胞死の機序に関して、すでに申請者は脳虚血負荷によって活性化されたカルパインがリソソーム膜を損傷しカテプシンを放出させるという「カルパイン-カテプシン仮説」を提唱した。ニホンザルを用いた神経細胞死の研究は世界的に独創的なものである上に、虚血後に発現する霊長類に特異的な遺伝子と蛋白の変化を神経再生との関連で検索した研究は諸外国においてはなされていない。そこで、同じサル脳虚血モデルを用いて海馬における神経再生機序に関して検索したところ、げっ歯類と霊長類とでは微妙な差異がみられた。すなわち、サルにおいても虚血負荷2週後をピークとして歯状回において、ネズミの5-10%程度ではあるが神経系幹細胞が増加していた。しかし、そのうちわずか1-3%しか神経細胞に分化していなかった。一方、この神経系幹細胞は、虚血負荷後に増生する毛細血管や小動脈のペリサイト(外皮細胞)に由来することが判明した。さらに、神経幹細胞が生まれる歯状回と生まれないCA1とを比較すると、両者には明瞭な差異がみられた。すなわち、歯状回においてはペリサイトに一致して神経幹細胞・神経細胞への分化を促進する因子であるBDNFがみられた。また、神経幹細胞の遊走を助ける因子である細胞接着分子PSA-NCAMがCA1では発現していないのに、歯状回の新生した神経幹細胞に強く発現していた。このようなげっ歯類と霊長類との差異を明らかにすることは、難治性の脳疾患に対する脳再生療法を研究開発する上で不可欠であると思われ、次年度の課題とした。
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