研究課題/領域番号 |
15390432
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山嶋 哲盛 金沢大学, 医学系研究科, 助教授 (60135077)
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研究分担者 |
小川 智 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (90283746)
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キーワード | ニューロン新生 / 脳虚血 / 霊長類 / 側脳室下帯 / 顆粒下層 / 海馬 / ニューロン前駆細胞 / 神経系前駆細胞 |
研究概要 |
ニューロン新生に関心を持つ研究者の大部分がげっ歯を対象としている世界的状況の中で、申請者は脳虚血サルを用いて、げっ歯類のニューロン新生と霊長類のそれとの間には著明な差異があることを明らかにした。 1)げっ歯類で報告された通り、脳虚血負荷は成体サル海馬の神経系前駆細胞(NPCs)を増加させる。しかし、その増加度はげっ歯類のおよそ1/10であり、NPCsから神経細胞への分化度はげっ歯類のおよそ1/15である。 2)また、げっ歯類とは異なりサルの側脳室下帯(SVZ)のNPCsは海馬CA1において神経細胞に分化することは皆無であった。すなわち、げっ歯類のデータに基づき、脳室下帯のNPCsを種々の栄養因子等により賦活して海馬CA1のニューロン新生を促すことは霊長類においてはきわめてむずかしい。 3)次に、げっ歯類とサルの内在性シグナルの差異を明らかにした。すなわち、げっ歯類のNPCsおよびニューロン前駆細胞は胎児脳のニューロン新生を促す転写因子であるPax6とEmx2およびNgn2を発現している。しかし、サルのSVZではこれらの転写因子はNPCsの段階で発現しているのみで、ニューロン前駆細胞においてはこれらの転写因子の発現はみられず、Sox1やNgn1、Dlx1/5、Olig3およびNkx2.2の発現がみられた。 4)虚血後のニューロン新生が見られるサル海馬においては、NPCsは脳室下帯ではなく顆粒下層(SGZ)の血管の外膜に由来していた。しかも、SGZの血管ニッシェはCA1とは対照的に成長因子であるBDNFや接着因子であるPSA-NCAMに富んでいた。 5)サル側脳室下帯および嗅球においても脳虚血負荷によってNPCsが増加していたが、これらが新皮質や線状体へと遊走して神経細胞に分化することは例外的で、げっ歯類での報告とはきわめて対照的であった。
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