研究課題/領域番号 |
15390443
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
金 彪 獨協医科大学, 医学部, 教授 (90231290)
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研究分担者 |
荻野 雅宏 獨協医科大学, 医学部, 講師 (80224137)
川本 俊樹 獨協医科大学, 医学部, 講師 (50301461)
朝来野 佳三 獨協医科大学, 医学部, 講師 (00316548)
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キーワード | 慢性脊髄圧迫 / 頚椎症性席髄症 / 遅発性運動障害 / 脊髄前角ニューロン / 神経栄養因子 / BDNF / NGF / 神経細胞死 |
研究概要 |
慢性脊髄圧迫モデルとして、急性期には脊髄損傷はなく16-17週の潜時を経て遅発性の運動機能障害をきたす実験系を開発して用いている(Kim P et al. Ann Neurol 55:503-511,2004)。運動障害に先行して脊髄前角ニューロンの減少をきたす点で、人間における頚椎症性脊髄症の病態に近く、類例を見ないモデルである。慢性圧迫による遅発性脊髄症による神経栄養因子がどのように病態に対応して変化しているか、BDNFとNGFの脊髄前角における発現の変化を、蛍光抗体法を用いて、定量的に測定した。Wistar rat(体重250〜300g)を用い、全身麻酔の下、第5・6頸椎椎弓下に膨張性ポリマーを挿入して局所脊髄圧迫を作製。運動障害の経過のモニターとしては自発性運動を回転式運動量測定ケージで、また強制運動をトレッドミルにてそれぞれ計測した。術後は3週ごとに上記の運動能を計測し、術後3週、6週、9週、12週、48週の各時点に屠殺した。脊髄を摘出して、C5/6の圧迫部位を中心として5μmのギャップで連続切片を作製した。圧迫部位及びそれより頭側、尾側の部位検体についてそれぞれ免疫組織化学的な検索を行なった。NGFならびにBDNFについて蛍光抗体染色を行い、観察した。両者ともラット前角細胞において確実な発現が確認できている。BDNFの発現は9週から圧迫に一致した部位の前角運動ニュウロンに増強が始まっているのが認められ、さらに25週になるとその発現が顕著になる。一方、NGFの発現は9週でもコントロール群に比べると運動ニューロンでの発現は低下しており、15週、25週と経過するとさらに著明に低下するのが認められた。以上より、BDNFは、圧迫によるニューロン生存環境が悪化する中で、そのviabilityを維持するために増強しているものと考えられた。
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