研究課題/領域番号 |
15390445
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
寺本 明 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60231445)
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研究分担者 |
吉田 大蔵 日本医科大学, 医学部, 講師 (30210701)
金 景成 日本医科大学, 医学部, 助手 (30339387)
大山 健一 日本医科大学, 医学部, 助手 (70350048)
金澤 隆三郎 日本医科大学, 医学部, 助手 (20333114)
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キーワード | 下垂体腺腫 / HP-75 / 低酸素 / apoptosis / 細胞浸潤 / 下垂体卒中 |
研究概要 |
最初に、ヒト下垂体腺腫細胞HP-75における1)HIFの発現、2)HIFのVEGF発現制御、3)HIFの他の因子に対する発現調節への影響を検討した。 1)低酸素状態では腺腫細胞のHIFの発現はrealtime RT-PCR法でmRNAの上昇とさらにwestern blottingで蛋白レベルでは有意に増加した。2)siRNAによるHIF mRNAのgene silencingを行い、同じくrealtime RT-PCRとWestern blottingで確認したが、同時にVEGF発現が有意に抑制されていた。従って、VEGFは転写因子HIFの制御を受けていることが明らかとなった。つぎに上記のようにHIFをgene silencingを行った後に低酸素状態で培養したところ、silencingを行ってない細胞に比して、cell viabilityが低下したことをMTT assayで見出した。電顕とTUNEL法さらにDNAの電気泳動を行って検討した結果、HIFの発現を抑制した細胞ではapoptosisが誘導されたことが明らかとなった。mRNAをそれぞれ採取して、cDNAに変換し、cDNAmicroarrayで分析した結果、この下垂体腺腫細胞が低酸素状態に陥ると転写因子HIFによってBNIP、p53といったtumor suppressor geneを転写促進することで、apoptosis誘導を抑制していた。従って、HIFは下垂体腺腫細胞が低酸素に陥ったときにこれら坑apoptosis作用を有すBNIP,p53を発現増加することで、低酸素によっておこる細胞死から細胞を愛護的に働いていることがわかった。一方で、同じcDNA microarrayの分析結果ではextracellular matrixのうちでbeta-2 lamininのみが増加していた。flow cytometryでも膜表面の増加を認めた。cell adhesion assayやz5mography、cell invasion assayの結果collagen type IVをlgandとしていたが、低酸素状態ではこのlamininの発現増加がHIFによってupregulateされ細胞浸潤が増加することを明らかにした。このcollagen type IVは下垂体腺腫組織の中で血管周囲腔に特異的に発現しており、低酸素状態に下垂体腺腫細胞が陥った際、近接した血管周囲及び血管内皮細胞に細胞浸潤がおこることで血管が破綻し、下垂体卒中の一因となるのではないかと考えられた。
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