研究概要 |
1.ブタ膝関節から採取した軟骨の力学特性を圧縮試験,インデンテーション試験,密度測定,厚さ測定によって調べた。力学試験と超音波計測を比較した結果,反射波強度が軟骨の動剛性と強い相関があることを明らかにした。 2.反射波強度を正確に測定するためには軟骨表面とトランスデューサーの平行度を1度以下に保つ必要があるので,平行度を保つためにトランスデューサーの周囲にシュラウドを固定した形式のプローブを試作し,関節鏡の操作に熟練しなくても正確な測定ができることを可能にした。 3.変形性関節症の診断と治療法を開発するため,ウサギ膝関節の靭帯と半月板の一部を切除した不安定膝モデルを作製し,超音波計測と摩擦試験によって軟骨の変性過程を調べた。その結果,軟骨の変性に伴って荷重部で反射波強度が低下し,摩擦係数が増加することを確認した。 4.ウサギの大腿顆部軟骨に骨軟骨移植術を行った後に超音波測定を行った結果,移植部周囲に軟骨が再生する。しかしその軟骨の反射波強度が低いことから,この部位に再生した軟骨は線維性であると推定された。 5.ウサギの大腿顆部の軟骨を切除した後にドリリングによって骨髄液を欠損部に導入すると軟骨が再生した。超音波測定によって再生軟骨は線維軟骨と硝子軟骨の中間的な性質を有することがわかった。一方,軟骨の欠損部に骨膜を移植した後に再生する軟骨は繊維性であった。 6.ウサギの膝軟骨の欠損部に間葉系細胞を含むスキャフォールドを移植した後に再生した軟骨を超音波で測定した結果,線維軟骨と硝子軟骨の中間的な性質を有することがわかった。以上より,良好な関節軟骨を再生させるためには欠損部に軟骨細胞に分化しうる細胞を封入する必要があることを明らかにした。
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