術前に本研究の同意を得た症例を対象に、手術にいたった疾患、その障害型式、罹病期間、腰痛、下肢痛、下肢のしびれのVAS、Roland-Morris Disability Questionnaire日本語版等を用いて、腰下肢症状の評価を行った。手術時に責任椎間高位の椎間関節から関節滑膜と軟骨組織を採取し、凍結保存後、ALISA法で各組織に含まれるTNF-α、IL-1β、IL6の濃度を抗TNF-α抗体、抗IL-1β抗体、抗IL6抗体を用いて定量化した。腰部脊柱管狭窄群(LSS)と腰椎椎間板ヘルニア群(LDH)の2群間で、対比すると、以下の結果が得られ間関節軟骨のIL-1βとTNF-αに関しては、両群間で差は無かったが、滑膜のIL-1βとTNF-αは、LSS群のほうが有意に濃度が高かった。IL6は、軟骨と滑膜両者でLSS群のほうが有意に濃度が高かった。下肢痛の程度と軟骨IL-1βとの関連性を検討してみると、軟骨内IL-1β陽性例のほうが、有意に下肢痛VASが高かった。腰痛関連QOLと軟骨IL-1βとの関連性を検討してみると、軟骨内IL-1β陽性例のほうが、有意にRDQ粗点が高かった。以上の結果から、腰部脊柱管狭窄では、椎間関節内のサイトカインが、下肢症状や腰痛の発現に関与している可能性が示唆された。
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