研究概要 |
本年度,日本白色家兎から単離した関節軟骨初代培養細胞に対して,1/2Hz,1時間,1-5MPaの間欠的静水圧負荷を行った.対照を無処置の細胞とした.圧負荷30分後にAGPC法でtotal RNAを抽出し,軟骨代謝に関連するmRNAの発現をRT-PCR法を用いて解析した.5MPaの圧力を負荷した細胞では対照と比べてII型コラーゲンのmRNAの発現が亢進していた.プロテオグリカンのmRNAの発現は変化しなかった.I型およびX型コラーゲンのmRNAは発現しなかった.これらの結果は,5MPaの間欠的静水圧負荷は軟骨細胞の最終分化を抑制し,軟骨基質代謝の発現を亢進する可能性を示した.5MPaの間欠的静水圧は軟骨代謝に正の影響を与える適度な圧力であると考える. ヒト歯根膜由来細胞に対しても,1/2Hz,1時間,1-6MPaの間欠的静水圧負荷を行った.対照を無処置の細胞とした.6MPaの静水圧負荷した細胞では対照と比べてIL-6,IL-8,RANKLおよびOPGのmRNA発現が亢進していた.IL-6およびIL-8は炎症に関与するサイトカインで,RANKLおよびOPGは破骨細胞に関連するサイトカインである.6MPaはヒトの咬合力に加わる生理的な静水圧である.この結果は,ヒト歯根膜由来細胞に対する生理的な間欠的静水圧負荷が炎症性サイトカインおよび骨代謝に影響を与えることを示した. 以上の研究結果は,正常の軟骨および骨代謝を理解するだけではなく,変形性関節症の病態を考える上で重要である.
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