研究課題
基盤研究(B)
骨芽細胞は骨形成に関与する以外に、破骨細胞の形成と機能発現の調節を介して骨吸収を制御する。骨芽細胞が産生する破骨細胞分化因子(ODF/RANKL)とその抑制因子(OCIF/OPG)の遺伝子発現は、カルシウム調節ホルモンによって調節される。本研究では、これらの遺伝子発現を制御する細胞内情報伝達機構の解明を目的とした。RANKLの発現増加とOCIFの発現減少がほぼ10時間後をピークとして同時に起きることが明らかとなった。活性型ビタミンD_3によるRANKLとOPGの遺伝子制御は、共通の細胞内情報伝達系を介して制御されると予想された。さらに検討の結果、副甲状腺ホルモン(PTH)などの他のカルシウム調節ホルモンとは異なり、活性型ビタミンD_3によるRANKLの発現誘導作用だけがタンパク質合成阻害剤によって阻害され、MAPキナーゼ阻害剤では阻害されないことが判明した。従って活性型タミンD_3の作用は、ある種の細胞内情報伝達因子の転写と翻訳を介して間接的におこるものと考えられた。そこで、マウス骨髄由来のストローマ細胞株であるST-2細胞を用いて、活性型ビタミンD_3刺激に伴って変動する遺伝子群をマウス転写因子のマイクロアレイによって網羅的に解析した。その結果、活性ビタミンD_3によって遺伝子発現が2倍以上増加する遺伝子としてビタミンD受容体(VDR)、IL-4受容体α(IL-4Rα)、RNAヘリカーゼ(Ddx21)の3つの遺伝子が、逆に1/2以下に減少する遺伝子として血清/グルココルチコイド調節キナーゼ(Sgk)が同定された。これらの遺伝子をそれぞれ発現ベクターにクローニングし一過性に過剰発現させると、VDR,IL4Rα、Ddx21の過剰発現では活性型ビタミンD_3によるRANKLの誘導が低下していたが、OPGの発現には変化が認められなかった。本研究の結果より、活性型ビタミンD_3によるにおけるODF/RANKLの発現上昇の一部に、VDR、IL4Rα、Ddx21が関与する可能性が示唆された。さらに、RANKLとOPGの発現は、別々の転写因子によって制御される可能性が示唆された。
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