研究概要 |
本研究では、膜電位画像および高速カルシウム画像により、大脳皮質、海馬、延髄および脊髄における興奮伝搬と細胞内カルシウム変化を解析し、以下のように特徴づけることができた。 1,大脳体性感覚野皮質切片において、第IV-V層への電気刺激が誘発する膜興奮と細胞内カルシウム変化の検索から、P/Q型カルシウムチャネルが、第I-VI層の全領域にわたり、前シナプスからのグルタミン酸放出を誘起するカルシウム流入に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、第II-III層の神経興奮伝搬はAMPA/kainate型グルタミン酸受容体を介する応答が重要であり、その際の後シナプスにおける細胞内へのカルシウム流入には、NMDA型グルタミン酸チャネルが重要であること、また、L-型カルシウムチャネルのカルシウム応答への関与も示唆された。 2,海馬の興奮伝搬についてもグルタミン酸受容体拮抗薬作用の検索から大脳皮質と同様にAMPA/kainate型グルタミン酸受容体が重要な役割を果たしていることがわかった。しかし、細胞内カルシウムの応答においては、とりわけ放射層における変化が大きく、大脳皮質で作用するのと同濃度での各種カルシウムチャネル拮抗薬の著明な影響は見られなかった。したがって、これらの応答に関与するカルシウムチャネルの分布や感受性には、部位により差異があることが示唆された。 3,三叉神経脊髄路核尾側亜核における求心性の興奮伝達においてもAMPA/kainate型グルタミン酸受容体が重要であるが、その電位伝搬の抑制は細胞内カルシウム応答をも抑制したことから、大脳皮質や海馬でのカルシウム応答機構と違いがあることが示唆された。 4,脊髄において侵害刺激を繰り返すと、刺激に対する興奮応答が増強してその伝搬領域も拡大し、いわゆるワインドアップといわれる現象脊髄における感受性増強との類似性が示唆された。
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