研究課題/領域番号 |
15390472
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 福井大学(医学部) |
研究代表者 |
福田 悟 福井大学, 医学部, 教授 (30116751)
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研究分担者 |
安田 善一 福井大学, 医学部附属病院, 助手 (50252002)
鈴木 久人 福井大学, 医学部, 助手 (90235987)
冨士原 秀善 福井大学, 医学部, 助教授 (20251803)
樋口 隆 福井大学, 医学部, 教授 (70106326)
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キーワード | オレキシン / 脳波 / 脳室内投与 / ヒスタミン / 麻酔 / イソフルレン |
研究概要 |
イソフルレン麻酔下で脳室内orexin投与が、脳波にどのような影響を及ぼすかについて研究した。1.2%および1.8%イソフルレン麻酔での脳波はBurst & Suppressionを示し、深い麻酔深度を示した。また、脳波でのBurst Suppression比(BSR:ある一定時間の脳波に対するsuppression時間の割合)に関しては、1.2%麻酔時が58%なのに対して、1.8%麻酔時が91%と麻酔が深くなるにつれBSRの値は多かった。1.2%麻酔時、orexin-Aを1nmol脳室内へ投与すると、2分後から脳波は活性化し、suppressionは消失した。1.8%麻酔時でもorexin-A脳室内投与後BSRは次第に減少し、30分後には65%となり、投与2時間後には回復した。このことから、orexin-Aはイソフルレン麻酔に拮抗し、脳波を活性化することが明らかとなった。また、自由行動ラットを用いたorexin-Aの脳室内投与は血圧,心拍数を指標とした交感神経活動を活性化することが証明されている。しかし、1.2%および1.8%麻酔下で、orexin-A脳室内投与は血圧、心拍数に影響しなかった。以上の結果から,イソフルレンはorexin-Aによる覚醒経路と交感神経活性化機構には均一に作用しないことがわかった。一方、orexin-Bに関しては、脳室内投与による脳波活性化はorexin-Aと比べて時間が短く、10分程度で回復した。したがって、orexinのイソフルラン麻酔拮抗作用は、orexin-Aの方がBよりも強いことがわかった。 脳内覚醒機構で働く伝達物質にはorexin以外にもヒスタミン、アセチルコリン、ドパミン、ノルエピネフリンがある。視床下部orexin細胞は、視床下部後側に存在し,ヒスタミンを遊離する結節乳頭核(tuberomammillary nucleus : TMN)と密接な神経線維の連絡があり、自由行動ラットでのorexinによる覚醒作用には一部ヒスタミンが関与すると言われている。そこで、orexinの脳室内投与がヒスタミンを介するかどうかを、ヒスタミンH_1受容体拮抗薬であるピリラミンを前投与してからorexin-Aを脳室内に投与した。しかし、ピリラミン前投与はorexin-Aの脳波活性化作用を阻止できなかった。したがって、orexin-Aの麻酔拮抗作用は少なくともヒスタミンH_1受容体を介するものではないことが明らかとなった。
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