研究課題
基盤研究(B)
視床下部外側から後側に存在するオレキシンは、食欲増進作用のみならず、覚醒維持、交感神経活性化、痛みの調節作用など種々の働きを有している。従来の報告では、イソフルラン、セボフルラン、プロポフォール、ニューロレプト麻酔からの覚醒にコリン作動性神経経路が重要な働きをしていることが知られている。そこで、われわれは脳内の種々の覚醒システムの中でもコリン作動性神経経路に着目し、麻酔からの覚醒にオレキシンがどのように関連しているかを検討した。その結果、(1)オレキシンの脳室内投与がイソフルラン深麻酔での脳波を活性化することがわかった。(2)オレキシンが存在する視床下部後側に興奮性伝達物質であるグルラミン酸を微量注入すると、オレキシンを選択的に活性化しイソフルラン深麻酔下での脳波を活性化した。(3)視床下部をオレキシン-サポリン複合体であらかじめ破壊しておくと、イソフルラン麻酔の最小肺胞濃度(MAC)を減少させ、イソフルラン麻酔のMACにオレキシンが影響することが示唆された。(4)イソフルランで麻酔を導入すると、コリン作動性神経経路の前脳基底核でのグルタミン酸放出を用量依存的に増大し、さらに、グルタミン酸受容体agonistであるAMPAを微量注入すると、イソフルランによる大脳皮質からのアセチルコリン放出抑制に拮抗してアセチルコリンを用量依存的に増大した。このことから、麻酔のレベルは麻酔薬の抑制作用とグルタミン酸などの興奮作用とのバランスから成り立っていることが示唆された。オレキシン神経細胞は前脳基底核に神経線維を送っており、また、その神経末端にはオレキシンのみならずグルタミン酸も含有していることから、このイソフルランによるグルタミン酸増大はオレキシン細胞と関連があるかもしれない。そこで、(5)イソフルラン麻酔下で前脳基底核にオレキシンを微量注入すると大脳皮質からのアセチルコリンの放出が用量依存的に増大した。また、コリン作動性神経は橋脚被蓋核を起源とする神経経路であり、この核を電気刺激すると大脳皮質からのアセチルコリンが増大する。この放出増大がオレキシン-1受容体拮抗薬であるSB334867の前脳基底核への微量注入で抑制されたことから、イソフルラン麻酔レベルにオレキシンが関与することがわかった。以上の結果より、麻酔からの覚醒にコリン作動性神経経路に関連したオレキシン神経経路が深く関与することがわかった。
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