1.脳神経核内薬剤投与用針装着ラットの作成 6週齢のSDラットにハロセン麻酔を施した。脳定位固定下に頭皮を切開し、頭蓋骨上の基準点の計測を行った。既知の脳内神経核分布図をもとにセルレウス核と基準点との立体的な位置関係(前後・左右・上下についての距離)を計算し、計算結果に基づいて薬剤注入用の金属針を刺入した。手術用セメントにて金属針を頭蓋骨に固定した。皮膚を縫合したのち覚醒させ、3日以上の回復期間の後実験を行った。 2.コントロール実験 遺伝子発現の抑制処置を受けていない正常なラットでの神経核内投与した薬剤の効果を確認するため、α2受容体アゴニストであるデクスメデトミジンを頭蓋に装着した金属針を介してセルレウス核内に投与し、鎮静・鎮痛作用を評価した。鎮静、鎮痛作用の評価は体位反射の消失時間、および温熱刺激に対する逃避反応時間にて行なった。現在基礎データーとしてデクスメデトミジンの用量作用関係を検討しつつある。また、針先の位置の確認やコントロールの状態の脳神経核における遺伝子発現の検討のため、実験後のラット脳組織を潅流固定して保存した。 3.今後の研究の展開に関する計画 神経核のα2受容体発現をサブタイプ特異的に抑制するため、各種α2受容体サブタイプに特異的なデコイ型核酸を設計・合成し、HJVリポソームやその他の坦体を用いて神経核に刺入した金属針より注入し遺伝子発現抑制を試みる。また、それ以外の遺伝子抑制法としてアンチセンス法、iRNA法も併せて試みる。各々の遺伝子発現抑制効率をmRNAの定量や受容体蛋白の定量により判定する。もっとも効率よく遺伝子の発現を抑制できた群についてデクスメデトミジンのセルレウス核内投与を行い、その効果を判定することにより鎮痛・鎮静作用に関わるα2受容体サブタイプがどれかを判定する。
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