研究分担者 |
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
伊吹 京秀 京都府立医科大学, 大学院, 講師 (90232587)
塚原 正人 山口大学, 医学部, 教授 (20136188)
岡野 こずえ 山口大学, 医学部, 助教授 (50160693)
松井 智浩 山口大学, 医学部, 助手 (50314828)
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研究概要 |
末梢神経損傷に虫来する神経因性疼痛の治療は極めて難治性である.最近の多くの報告や我々の研究結果から、末梢-中枢知覚神経系のシグナル変調,とくに脊髄神経可塑性に加え、今回は、1)障害部位の神経細胞死とサイトカイン、ラジカルのほかグリア反応、隣接部での神経可塑性とグリア反応などの解明、2)神経再生・修復能を高めうる神経栄養因子の果たす役割、3)栄養因子の合成誘導をもたらす臨床応用可能な薬剤や電磁波刺激による治療法の論理的基盤を得ることを目的鬼検討した。実験成果を包括的に述べると以下のようになる。 1)骨髄細胞(BMCs)は、まず増殖能力を旺盛に有する神経幹/前駆細胞であるneurosphereを誘導したことから自己移植が可能となった。脊髄障害ラットへこれらBMCs由来neurosphre移植を行い、運動機能に加え、知覚機能の著しい改善がみられ、電気生理学的な評価でcortico-spinalでのlong tract再生が起こる可能性も確認した。神経因性疼痛において、グリア反応-シナプス再生へapoptosisと遺伝子発現、また神経栄養因子、サイトカインとの相互作用が軽微ながら判明した。 2)間葉細胞移植は、アストロサイトへの影響で軸作伸展により機能再建に拘わることが分かった。 3)神経因性疼痛で,障害カスケード,シグナリングや細胞障害性が緩やかに起き,選択的脆弱細胞(介在ニューロン)では、障害・修復過程でグリア増殖とシナプス関連蛋白が増加し、シナプス再生の可能性が分かった。この遺伝子発現が治療のマーカーになるか,グルタメート神経阻害関連の薬物治療やサイトカイン阻害薬などの作用の結果により評価する。 4)神経栄養因子の合成誘導をもたらす4-methyl cathechjol amineはapoptosisの制御、シナプス再構築を増強し慢性疼痛を軽減した。(1)脊髄髄腔内TNF-a注入や末梢4methylcatechol投与で痛覚過敏が起き、その作用はそれぞれ抗TNF-a、抗NGF投与で軽減しうること、(2)末梢神経損傷部への電磁波刺激(交感神経刺激および知覚神経細胞の賦活、分化誘導効果)が痛覚過敏を軽減し、その作用は局所抗NGF投与で軽減されること、などが判明した。 以上から、神経因性痛覚は末梢神経損傷で起き、その後求心性入力の持続的増加(脊髄glutamate増加)を引き金とする後角ニューロンの持続発火が起き、遺伝情報の変調も今回判明した.さらに慢性期における治療では、電磁波治療や栄養因子とマクロファージ、グリアなど、細胞外マトリックスの修復過程における関与が示唆され、それを誘導するかさらに検討が必要である。bFGFや,BDNFの安定した注入方法、免疫抑制の技術的問題の改善など、臨床応用に向け今後の課題である。
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