研究概要 |
周術期使用薬剤が、酸素代謝の調節に中心的な役割を果たしている低酸素誘導性遺伝子応答に与える影響を分子生物学的に検討した。 すなわち、転写因子hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)の活性を培養細胞レベルで検討する実験系(western blot, RT-PCR, Northern blot法、遺伝子の細胞への導入法、レポーターアッセイ法)でおこない、さらに細胞内低酸素センサー分子への作用を検討した。 1.静脈麻酔薬propofolは、HIF-1の構成的な活性を抑制するが、1%低酸素条件下での活性化には影響しない。一方、静脈麻酔薬thiamylal.thiopentalは構成的かつ誘導性のHIF-1の活性を抑制する。 2.局所麻酔薬lidocaine、bupivacaineは、HIF-1の構成的、誘導性の活性に影響を与えなかった。 3.μ,κ,δオピオイド受容体の特異的なリガンドは、HIF-1の構成的、誘導性の活性に影響を与えなかった。 4.亜硝酸性血管拡張薬nitroglycerin, isosorbide, nitroprussideのうちnitroprussideがnitric oxide非依存的にHIF-1の構成的、誘導性の活性を抑制する。 5.カルシウム拮抗薬のうち第3世代薬剤cilnidipineが、HIF-1の構成的、誘導性の活性を抑制する。 6.敗血症の病態の進展に中心的な役割を果たすグラム陰性細菌由来菌体lipopolysaccharideは、単球から分化成熟化したマクロファージ様細胞株において分化状態依存的にHIF-1の活性化をもたらした。 以上の研究結果は、関係学会で発表するとともに専門誌に公刊した。
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