研究課題/領域番号 |
15390485
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北村 唯一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (70010551)
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研究分担者 |
久米 春喜 東京大学, 医学部附属病院, 講師
冨田 京一 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20272578)
太田 信隆 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (50160510)
西松 寛明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60251295)
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キーワード | 一塩基多型 / 17β-hydroxysteroid dehydrogenase / Catechol-O-methyltransferase / Estramustine phoshate sodium / 2-methoxyestradiol / Prostate cancer / Tailor-made medication |
研究概要 |
我々はEstramustine Phosphate Sodium (EMP)の代謝に関わる17β-hydroxysteroid dehydrogenase (HSD17B)遺伝子上に存在する一塩基多型(SNP)を解析することでEMPによる副作用発症の個体差を説明し得るのではないかと考え、低用量EMP療法を行った患者のSNPsを解析した。HSD17B types1,7,8遺伝子について塩基配列をdirect sequence法によって解読し、個々のalleleと副作用に関する臨床データとを照合して検討した。その結果、HSD17B type7遺伝子の第2イントロン上にあるSNP(IVS 2+2595 C>G)においてwild homozygousであった患者群の方がheterozygousであった患者群よりも下腿浮腫を来しやすかったという結果を得た(オッズ比=5.47、95%信頼区間:1.26-23.64)。また同遺伝子についてIVS 2+2595 C>GとIVS 3+9 T>Cの組み合わせによるhaplotype解析を行ったところ、G-T alleleを有する患者群の方がその他の患者群に比べて有意に食欲不振を発症していた事が判明した(オッズ比=9.13、95%信頼区間:1.15-72.76)。 近年、Estradiolの代謝産物である2-methoxyestradiol (2ME2)が抗腫瘍効果と血管新生抑制効果を併せ持つ化合物として脚光を浴びている。文献的にはin vitro実験において、2ME2の細胞増殖抑制効果はEMPの約11倍も高い事が明らかとされており、低用量EMP療法が効果的である理由は、既知のEMPの薬理作用の他、2ME2の細胞増殖抑制効果に依る可能性もあると考えている。280mg/dayのEMPを内服した患者の血清中estradiol濃度は30000pg/mL付近まで上昇しており、高濃度の2-methoxyestradiolが内因性に生成されている事が予想された。2ME2の生成に関わる酵素はCatechol-O-methyltransferase (COMT)であり、そのcoding SNP(Val158Met)によってCOMT活性がVal/Val typeに比べてMet/Met typeでは1/3〜1/4に低下する事が知られている。そこで、このSNPがEMP療法の治療予後を左右しているのではないかと考え、RFLP法を用いて各患者のgenotypeを確認し、Prostate-specific antigen (PSA) failureをend-pointにgenotype毎のPSA-progression-free survival曲線をKaplan-Meier法によって描き、log-rank検定による統計学的検討を行った。その結果、Val/Val typeの患者群の方がVal/Met or Met/Met typeの患者群に比べて有意に治療予後が良好であった(p=0.027)。このことから、Val158Met COMTのgenotypeによってEMP療法の治療予後が予測可能となり、より積極的にEMP療法を行うべき患者の選定が可能になるものと期待される。
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