研究概要 |
今年度は、前立腺癌に対するリン酸エストラムスチン療法の副作用のうち消化管障害の発現リスクが、チトクロームP450 1A1遺伝子多型の遺伝子型によって異なるか否かを検討し、下記の結果を得ている。 (1)リン酸エストラムスチン療法を受けた126人の患者のうち、42人に消化器障害を発現した。消化器障害の重症度はNational Cancer Institute-Common Toxicity Criteriaのgrade1が30人、grade2以上が12人であった。 (2)m1多型でメジャーアレルホモ接合を有する患者群はそれ以外の遺伝子型を有する患者群に比べて有意に消化器障害の発現リスクが高かった。 単変量解析:オッズ比,2.78;95%信頼区間,1.31-6.07;p値,<0.01. 多変量解析:オッズ比,2.70;95%信頼区間,1.25-5.99;p値,0.01. (3)IVS1-728多型でメジャーアレルホモ接合を有する患者群はそれ以外の遺伝子型を有する患者群に比べて有意に消化器障害の発現リスクが高かった。 単変量解析:オッズ比,3.41;95%信頼区間,1.59-7.56;p値,<0.01. 多変量解析:オッズ比,3.33;95%信頼区間,1.52-7.51;p値,<0.01. (4)m1、m2、IVS1-728の3多型によるハプロタイプのうち、全ての多型がメジャーアレルであった場合の消化器障害の発現リスクは、オッズ比,11.86;95%信頼区間,5.11-27.53;p値,<0.01であった。 以上、本論文はチトクロームP450 1A1多型の遺伝子型が前立腺癌に対するリン酸エストラムスチン療法による副作用のうち、消化器障害の発現リスクと関連することを明らかにした。
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