腎癌に対するDNA合成・分解酵素をターゲットとした分子診断・分子標的治療の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15390496
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 水谷 陽一 京都府立医科大学, 医学研究科, 講師 (10243031)
• 研究分担者: 三木 恒治 京都府立医科大学, 医学研究科, 教授 (10243239) ; 河内 明宏 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教授 (90240952) ; 浮村 理 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (70275220)
• キーワード: 腎癌 / DNA / DPD / TS / TK / OPRT / TP / PDECGF

研究概要

「目的」Dihydropyrimidine dehydrogenase (DPD)は核酸分解に重要な酵素であると報告されている。また、抗癌剤である5-fluorouracil(5-FU)もこのDPDによって分解される。泌尿器科癌におけるDPD発現の重要性はほとんど検討されていないのが現状である。そこで今回我々は、腎癌におけるDPD活性を測定し、Stage、Gradeなどとの相関関係を検討した。さらに腎癌のDPD活性と5-FUに対する感受性との相関関係も検討した。
「対象と方法」68人の腎癌患者より腎癌組織を採取し、DPD活性を5-FU degradation assayを用いて測定した。また、腎癌の5-FUに対する感受性は24時間のMTT assayにて検討した。
「結果」腎癌のDPD活性は正常膀胱に比べ、有意に低値であった。腎癌のStage、GradeとDPD活性との間には負の相関関係が認められた。また、腎癌のDPD活性と5-FUに対する感受性との間には負の相関関係が認められた。DPD阻害剤であるCDHPを併用することにより、腎癌細胞の5-FUに対する感受性が増強した。
「考察」腎癌においてはDPD活性が低値であり、腎癌細胞では核酸の分解が活発ではない可能性が示唆された。また、CDHPなどのDPD阻害剤を併用することにより、腎癌の5-FU耐性が克服される可能性も示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Nakanishi, H. et al.: "Significant antitumoral activity of cationic multilamellar liposomes containing human interferon-Bgene against human renal cell carcinoma"Clinical Cancer Research. 9. 1129-1135 (2003)
• [文献書誌] Mizutani, Y. et al.: "Significance of thymidylate synthase activity in renal cell carcinoma"Clinical Cancer Research. 9. 1453-1460 (2003)
• [文献書誌] Mizutani, Y. et al.: "The significance of thymidine phosphorylase/platelet-derived endothelial cell growth factor activity in renal cell carcinoma"Cancer. 98. 730-736 (2003)
• [文献書誌] Mizutani, Y. et al.: "Significance of dihydropyrimidine dehydrogenase activity in renal cell carcinoma"European Journal of Cancer. 39. 541-547 (2003)
• [文献書誌] Mizutani, Y. et al.: "Significance of thymidine kinase activity in renal cell carcinoma"Journal of Urology. 169. 706-709 (2003)
• [文献書誌] Nakanishi, H. et al.: "Nonviral genetic transfer of Fas ligand induced significant growth suppression and apoptotic tumor cell death in prostate cancer in vivo"Gene Therapy. 10. 434-442 (2003)
• [文献書誌] 水谷陽一: "ASCO 2003 ハイライト"株式会社ファーマインターナショナル. 4 (2003)