研究概要 |
本年度は申請した5つの戦略のうち以下の3点の検討を主に行った。 1.SB(SodiumButyrate)によるp21の誘導系:(1)SBによる細胞老化誘導の分子機構を明らかにするためマイクロアレイを行った。Rbシグナルが維持されている子宮体癌HHUAをSBで処理した。HDAC阻害剤無処理細胞からもmRNAを抽出し、マイクロアレイ法を用いた大容量遺伝子発現の解析を行った。HDAC阻害剤処理に伴い、発現を大きく変化する遺伝子プロファイルを作成した結果。さらにRbシグナルが不活化されている子宮頚癌細胞Helaを同様のことを行った。その結果これらに共通して発現誘導される遺伝子が19見つかっておりHDAC-p21誘導系独自の細胞老化誘導機構を明らのする1助と考える。(2)さらにp21による老化死シグナルを検討する目的でp21を発現するアデノウイルスを作製した。Rbの発現が消失したHela, p53に変異を持つSKOV,p16の発現のないHela等でも老化死を誘導し、これによって転写活性化する未知の下流の遺伝子群が細胞死誘導に関与することが示唆された。活性酸素消去剤NACにてこの細胞死は抑制されることから、そのひとつとして活性酸素誘導系のシグナルが関与していることが明らかとなった。 2.DCC:ligandであるNetrin-1が存在しないときDCCの再発現は体癌細胞にアポトーシスをさらに複数の癌細胞で確認した。体癌特異的なデリバリーがなされるようCA125(体癌の腫癌マーカー)と結合したイムノジーンの作製をおこなう一方Netrinの結合を阻害する抗体の設計にも着手した。 3.ORF12:ORF12は体癌で高率に遺伝子変異が見られ、細胞老化誘導能をもつ。ORF12発現ベクターを作製しORF12変異のある体癌細胞株での細胞老化誘導に際して既知の関連遺伝子p21,p53,Rbと、従来考えておられなかったVHL,HIF-1などの発現変化を追跡した。その結果ORF12の細胞老化誘導にはp21の発現上昇のみが関与しp 5 3、RB、p14,16,27などは変化しなかった。またこの老化死誘導はHIF-1減少を伴っており、ORF12によるHIF-1の水酸化に伴いHIF-1の分解が亢進することが体癌細胞の老化死誘導の引き金になることが明らかとなった。今後HIF1を標的とした癌治療も検討してゆく。
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