研究概要 |
日常生活の中で環境ホルモンとして実際に曝露される機会が多く,作用発現部位が異なるBPA(濃度(1)5mg/kg/day,濃度(2)100mg/kg/day),DEHP(濃度(1)1mg/kg/day,濃度(2)100mg/kg/day)およびTCDD(濃度(1)20ng/kg,濃度(2)2μg/kg)の3つの化学物質を代表として実験に用い,マウスの胎子・新生子期にこれらを曝露し,性成熟過程における雄マウスの脳内ステロイドホルモンレセプター遺伝子の発現変化ならびに生殖腺への影響を性成熟過程である2,4,6週齢で組織学的・分子生物学的に解析し,単独投与と複合投与の場合を比較検討した.その結果,脳重量はBPA単独投与群および複合投与群の4週齢で有意に低下した。2週齢において脳内ARはControl群と比較してDEHP投与群で有意に増加し、BPA単独投与群、TCDD単独投与群で増加、複合投与群で低下傾向が認められた。4週齢のAR、ならびに2、4週齢のERαではいずれの投与群においても低下し、とくに4週齢のBPA単独投与群、複合投与群においてERαの低下は有意なものであった。6週齢においてはAR、ERαともに低下する傾向を示した。一方,生殖腺においては単独投与・複合投与を含めたすべての投与群において,免疫組織学的および分子生物学的解析によって,内分泌攪乱化学物質の影響が確認された.低濃度単独曝露および低濃度複合曝露の場合,性成熟過程で最も強くその影響が確認された.この時,低濃度単独曝露の場合は,精巣のARおよびStARタンパク質の減少に対して代償的に各々の遺伝子の発現が増強することが確認されたが,低濃度複合曝露では精巣のARおよびStARタンパク質の減少と同時に,各々の遺伝子発現の低下が認められ,ステロイドホルモン産生系とその遺伝子発現ともに抑制を受けている可能性が示唆された.性成熟期に達すると低濃度複合曝露では精巣AR遺伝子の発現が依然低値を示し,低濃度単独曝露の場合より強い影響を受けていることが示唆された.
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