研究概要 |
遺伝子変異動物hpgマウスを用いてGnRH不在下における性分化関連遺伝子群とStARの発現変化について個体発生学的に解析した.また,胎生期内分泌攪乱化学分子負荷による性分化への影響をStARと性分化および生殖内分泌関連遺伝子群の個体発生学的な生体・分子レベルでの発現パターン解析から遺伝子相互の関係を探ることにより遺伝子ネットワーク全体のしくみと構造を明らかにし,性分化の過程でのステロイドホルモンの産生調節機構の解明を試みた.その結果,アクチビンおよびPMSGの投与は,FSH作用のみならず,強力なLH作用によりライディッヒ細胞の増生を促進してテストステロン合成,さらにセルトリ細胞の活性化により造精機能を回復させた.GnRH分泌の機能的性差はGnRHニューロン活性の性差に起因することが示され,その活性の性差は生後初期ステロイドに影響されることが明らかになった.ゴナドトロピン分泌の制御は,生殖器よりもより低濃度のエストロゲン様物質で影響を受けることが示された.さらに,雄マウスの妊孕能はStAR発現と密接に関わっており,内分泌攪乱物質がStARに与える影響の重要性が示唆された.StAR結合タンパク(SBP)はStARと結合し,ステロイドホルモンの産生を促進することが判明した.SplとSF-1が相互作用して,ヒトStARのプロモーター活性を調整することを明らかにした.発達期の神経系における性的二型性にはアポトーシス制御機構が関与し,その機序に新たな知見を加えるとともに,ヒトを含めた哺乳動物の脳の性分化機構の解明に重要な基礎的知見を提供した.個体発生的にStARタンパクの発現は胎齢13.5〜18.5日において雄に優位であった.以上,StARを中心に生殖腺の分化および性分化制御カスケードの一端を明らかにした.また,エストロゲンの脳の性分化に対する分子メカニズムを示すことができた.
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