研究課題
基盤研究(B)
不妊症や不育症の一因となる着床不全、特に内膜機能不全に対する新しい治療法として、細胞を用いたテーラーメイド医療を着想し、その開発と実現化のための基礎的検討を通じて以下の成果を得た。1)マウス子宮内膜細胞の分離・培養技術および分化モデルの確立酵素処理および濾過操作により、マウス子宮から内膜細胞を分離し培養する方法を開発するとともに、性ホルモン処理等により内膜分化を誘導する系を確立した。2)構成性発現ウイルスベクターの構築と内膜細胞への遺伝子導入上記1)のシステムを用いて、至適遺伝子導入条件を探索した。レポーター遺伝子であるLacZあるいはGFPを発現するアデノウイルスを1)の内膜細胞に感染させたところ、約80-90%の細胞にGFPおよびLacZの強い発現を認めた。3)子宮内における移植遺伝子導入内膜細胞の動態LacZ導入細胞をマウス子宮へ移植したところ、移植後約1週間の時点において、子宮内にlacZ陽性細胞の存在が認められた。4)内膜機能不全マウス作製への基盤技術の開発細胞治療の有用性を検証するためには、内膜機能不全マウスの作製が必須である。任意の時間に内膜遺伝子を制御する方法として、超音波を用いて子宮内膜に遺伝子をin vivo導入する方法を開発し、従来のリポゾーム法などに比べて、極めて高い効率での遺伝子導入が可能となった。以上、本研究より、(1)内膜細胞への遺伝子導入、(2)内膜細胞の子宮内膜へのin vivo移植法、(3)in vivo内膜遺伝子制御法、に関する基礎的知見と基盤技術が得られた。今後の課題は、leukemia inhibitory factorなどの着床必須遺伝子を(3)の方法でノックダウンさせたマウスに、(1)によるノックダウンをrescueしうる遺伝子改変内膜細胞を、(2)の方法により移植する、という実験システムを用いて、着床不全に対する細胞治療の有用性を検証することである。
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