研究課題
基盤研究(B)
1)HEK293に膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1(MT1-MMP)FLAG発現ベクターを形質導入した293-MT1-FLAGを用い、抗MT1-MMPマウスモノクローナル抗体114F1に131Iをラベルして殺細胞効果および増殖抑制効果を検討したところ、293細胞および293-MT1-FLAGに対するコロニー形成率に差を認めなかった。そこで、MT1-MMPの阻害剤BB94を併用した。するとMT1-MMPタンパクの発現が増えることが判明した。10μgのMT1-MMP抗体を投与してもBB94による抗体結合率は増強されないが100μgの抗体を投与すると、細胞膜表面への抗体の結合は10-20%増強された。2)上記以外の抗体として、免疫組織染色においてMT1-MMP蛋白の描出に優れている113-5B7およびフローサイトメトリーでMT1-MMP検出に優れているAB815を用いて上記の方法でMT1-MMP発現細胞への結合率を評価した。その結果、113-5B7のMT1-MMPに対する親和性は114F1とほぼ同等であるのに対して、AB815は114F1よりも5倍から10倍高いことを見いだした。3)Epstein-Barrウイルス(EBV)がん遺伝子LMP1の細胞外領域に存在するアミノ酸配列を検討したところ、1領域6-7アミノ酸のものが3領域あるのみで、この領域を特異的に認識する抗体の作成は極めて困難であること、また、作成してもアフィニティーは低く治療目的には使用不可能であることが判明した。4)そこでLMP1により細胞膜表面に発現が誘導される分子に対する抗体療法開発を目的とした。その結果、LMP1はNF-κBを活性化してmucin1発現を著しく増強することが判明した。mucin1に対する分子標的療法は現在臨床応用に向けて研究が進んでいる分野であり、この治療法が上咽頭がんに対しても有効であることが示唆された。
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