研究課題
基盤研究(B)
本研究では、角膜移植の予後不良な疾患である難治性角結膜上皮疾患および水疱性角膜症に対する新しい治療法として、患者自身の細胞を用いた再生治療法を開発することを目的とした。我々は温度応答性培養皿を使用した細胞シート工学を角膜細胞の培養技術と融合することにより、移植可能な培養細胞シートを作製した。本研究の成果として、培養角膜上皮シート移植の開発では、(1)温度応答性培養皿上で角膜上皮幹細胞を増殖させ重層化した角膜上皮シートを作成・回収する方法を確立した。(2)ヘキストを用いたSP細胞の単離、細胞表面マーカーを用いたセルソートにより、角膜上皮前駆細胞の濃縮方法を確立した。(3)培養角膜上皮シートを移植する方法を確立した。(4)ウイルスベクターを用いて培養角膜上皮シートに効率よく遺伝子導入を行う方法を確立し、細胞シートを用いた遺伝子産物のデリバリーの概念を打ち立てた。培養角膜内皮シート移植の開発では、(4)正常ヒト角膜内皮細胞を初代培養して増殖させる技術を確立した。(5)温度応答性培養皿上で角膜内皮細胞を増殖させ角膜内皮シートを作成・回収する方法を確立した。さらに、この人工的に作製した内皮細胞シートにin vivo正常内皮層と同様のポンプ機能とバリア機能が備わっていることを証明した。(6)動物実験により、培養角膜内皮シートを移植する方法を確立した。培養角膜内皮シートに効率よく遺伝子導入を行う方法を確立する。開発した培養角膜上皮シート移植法は臨床応用に入っており、培養角膜内皮シート移植は臨床応用の一歩手前の状態にまで達している。
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