募集した96名の日本人小学生を無作為に2群に分け、一群には近見加入度数1.5Dの累進屈折力眼鏡、もう一群には単焦点眼鏡(対照群)を処方し、これを常時装用させた。6ヶ月ごとに定期検査を実施し、屈折度数、角膜曲率半径、眼軸長、調節力、眼位などについて追跡調査を行った。さらに、眼鏡視力と眼鏡フレームの偏位を測定し、必要があれば参加眼鏡店の眼鏡士と協力して調整を行った。赤外線自動レフレクメーターによる調節麻痺下の屈折値、レーザー干渉計による眼軸長測定をもとに、両群間で近視進行速度に差があるかどうかを検した。最終結果が得られるのは、2006年7月の予定である。 この臨床比較研究の初回検査時のデータを元に、屈折、調節、斜位に関するベースラインデータを報告した。その結果、調節麻痺薬(0.5%トロピカミド)点眼後、1Dを超す近視度数の軽減を認めた症例は96例中一例も見られず、近視を示す学童において、調節緊張(偽近視)の頻度は、従来考えられてきた以上に希であることが明らかになった。また、近視を眼鏡にて完全矯正した場合、症例の約30%に、近視進行の危険因子として議論されている近見内斜位が見られることを明らかにした。 さらに、累進屈折力眼鏡の下方ずれをデジタル画像によって他覚的に評価する方法論を考案し、参加者において調査を行った。その結果、相当量の累進屈折力眼鏡の下方ずれが高頻度にみられることが明らかになり、これは近視進行予防に関する累進屈折力眼鏡の近見加入度数効果を減じる大きな要因であることを初めて指摘した。
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