研究概要 |
(1)hedgehogシグナル阻害マウス胚における血管新生の異常とその解析 Sonic hedgehog(Shh)に代表されるhedgehogシグナルは胎生期の重要なモルフォゲンだが、血管新生での役割は不明確である。本研究ではHedgehogシグナル阻害薬シクロパミンをマウス全胚培養系に投与し、胚の血管新生の異常を調べた。 a.卵黄嚢血管網形態形成の異常・・シクロパミンをE7.8-E9.5に投与した胚の卵黄嚢血管網はリモデリングを欠く未熟な状態にとどまり、脈管形成から血管新生段階への移行が障害された。indian hedgehogおよびその下流のVEGF, Notchシグナルの関与が推測された。 b.大動脈癒合過程の異常・・シクロパミンをE7.8-E9.5投与すると、本来すでに一本の大動脈であるはずが、未熟な左右1対の背側大動脈の状態であり、Shhが下流でBMP-4,VEGFの発現を静御するためと考えられた。 c.神経管血管新生の異常・・シクロパミンをE8.5-E10.2投与すると、神経管への血管進入が阻害された。運動ニューロンがAngiopoietin-1を発現すること、Shhが運動ニューロンの誘導に関ることに起因すると考えられた。 (2)伸展された単純性血管腫における血管新生関連遺伝子の発現変化 切除術の際に伸展された単純性血管腫症例の組織の遺伝子発現変化を調べると、angiopoietin-1,Tie2の発現亢進を認め、血管新生の促進すなわち血管腫組織の増大をきたしたと考えられた。 (3)bFGF投与褥瘡における異所性骨化 bFGFは強力な血管新生因子として創傷治癒目的で臨床使用されるが、胎生期は骨誘導その他多彩な生理活性を持つ。本研究は2例のbFGF投与褥瘡での創内肉芽組織の異所性骨化を報告したもので、胎児性形態形成因子の臨床応用のひとつの問題提起といえる。
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