動的脳自動調節機能の数理学的解析法の開発 1.データ採取 ボランテア3名において、頭部を挙上した仰臥位で、右側頭骨のtemporal windowから、経頭蓋骨ドップラー(TCD)を用いて、中大脳動脈血流速度波形を導出、同時に、心電図、非観血動脈圧波形と合わせて3信号の波形を200サンプル/秒の速度で、約10分間、A/Dコンバーター(TEAC【○!R】LX10)を用いてコンピュータに取り込んだ。さらに、各3名ボランテアにおいて、終末呼気炭酸ガス分圧(ETCO_2)を指標に、安静時呼吸により正常炭酸ガス血症(35mmHg<ETCO_2<50mmHg)、炭酸ガス吸入により高炭酸ガス血症(ETCO_2>55mmHg)、安静時呼吸により正常炭酸ガス血症状態を10分間維持、安定したと思われる状態で上記3信号を約5分間取り込んだ。 2.動的脳自動調節能の数理学解析法の確立 汎用数学解析ソフトMatlab6.0【○!R】を用いて解析した。 (1)周波数領域解析の開発 心電図のR波を指標に、1心拍ごとの動脈圧(平均)と脳血流速度(平均)を求め、心電図のR波に沿ってデータを並べ、補間処理後、5サンプル/秒で再サンプルイングした。新しく得られた平均動脈圧と平均脳血流速度の262個のデータをbutterworth windowに適応後、高速フーリエ変換、平均動脈圧と平均脳血流速度のauto-spectrum(S_<xx>(f)とS_<yy>(f))および両者のcross-spectrum(S_<xy>(f))を計算した。伝達関数H(f)=S_<xy>(f)/S_<xx>(f)からコヒーレンス、ゲイン、フェイズを求め動的脳自動調節能を解析した。 (2)周波数領域解析の妥当性の検討 正常炭酸ガス血症状態では、特に0.1Hz以下でゲインとコヒーレンスは低下、フェイズは0.3Hzまでは陽性であった。高炭酸ガス血症では、特に0.05Hz以下でゲイン増加、コヒーレンスは上方にシフト(特に0.1Hz以下で著名)、フェイズは0.1Hzまでは陽性であった。正常炭酸ガス血症状態に戻すとこれらの変化も戻った。現在、これらの変化がシステム解析の領域から妥当であるか検討中である。
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