研究課題
基盤研究(B)
我々は平成15、16年度の研究で、脳表微小循環(脳血流量、動静脈血管径、脳酸素消費量、脳温度)を、同一部位で、同時に、無侵襲で、しかもリアルタイムに測定することができる顕微分光分析システムの開発に世界に先駆けて成功した。我々は独自に開発したこのシステムを用い、(1)血流再開直後の脳微小循環の変化を経時的に測定し、砂ネズミ前脳30分虚血モデルが人間の低酸素脳症の病態に酷似していること、(2)5分、15分虚血モデルと30分虚血モデルとでは、虚血再灌流後の脳血流、動静脈血管径、脳酸素消費量の変化パターンが全く異なること、を明らかにした(2005年3月日本神経外傷学会で発表)。平成17年度は、(1)虚血再灌流後の脳血流、動静脈血管径の経時的変化だけでなく、脳実質の温度も測定し、長時間虚血後での脳細胞の代謝について検討した。その結果、5分虚血群と15分虚血群では再灌流15分後に約1℃の一過性脳温上昇を認めるだけで、その後速やかに前値に復したのに対して、30分虚血群では再灌流15分後に2℃以上の急激な脳温上昇を認め、下降後も前値より約1℃高い状態が遷延した。(2)再灌流後に高温状態が持続する30分虚血群で、脳組織が好気的代謝を行っているかどうかを確認するために、3群とも再灌流12時間後にTTC染色を行ってミトコンドリアでの好気的代謝の有無を検討した。その結果、3群とも脳の全領域が全く同程度に赤く染色され、30分虚血群といえども12時間後にミトコンドリアの好気的代謝が十分に行われていることが判明した((1)(2)については2005年10月日本救急医学会総会、11月米国神経外傷学会で発表)。(3)さらに3群で体性感覚誘発電位(SEP)及び脳波の虚血再灌流後の経時的変化を測定し、30分虚血群でも神経細胞としての機能が維持されているかどうかについて検討した。その結果、30分虚血群でも再灌流1時間後には5分虚血群・15分虚血群と同様にSEP及び脳波は回復するが、その後減弱して行き、やがてフラットになって神経細胞としての機能が消失することが判明した(2006年9月米国外傷学会で発表)。以上の実験結果から、5分虚血群、15分虚血群と30分虚血群とでは脳虚血再灌流後、全く異なる変化を示すことが明らかになった。長時間の虚血再潅流では脳温と脳血流の不均衡な回復のため脳が傷害され、神経学的予後、生命予後に影響していると考えられた。
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