研究分担者 |
仲田 義啓 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40133152)
森岡 徳光 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (20346505)
森田 克也 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (10116684)
北山 滋雄 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (80177873)
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研究概要 |
アロディニアは,本来痛みを伝えない触角,冷覚など非侵害性の刺激によって痛みを生じる現象であり,神経因性疼痛neuropatic painの主症状として知られている.アロディニアは,神経損傷や帯状萢疹などに誘発される慢性疼痛であり,抜歯後に生じる長期間持続する痛みの成因ともなる.このような神経因性疼痛は難治性であり,その発症機構は十分に解明されていないが,近年,マウスやラットの脊髄腔内に薬物を注入することにより誘発される実験モデルが開発され,研究の伸展がみられるようになった.申請者らは,このようなモデルを用いてこれまで脊髄ATP/プリン受容体はアロディニア発症に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた.血小板活性化因子(PAF)は炎症のメディエーターとして,とくに強力な浮腫誘発物質として知られる.しかし,末梢組織に投与しても痛みを誘発しないことから痛覚伝導における役割は知られていない.本件研究は脊髄での痛覚伝導におけるPAFの役割について検討し,以下の結果を得た. 1.PAFのマウス脊髄腔内投与は10fg〜1pgという低用量ならびに100pg以上においてアロディニアを誘発した.Lyso-PAFは100pg以上でアロディニアを誘発した. 2.PAF誘発アロディニアはPAF受容体拮抗薬TCV-309により抑制された. 3.PAF受容体mRNAはマウスdorsal root ganglion neuronならびに脊髄にRT-PCRにより発現が確認された. 4.PAF誘発アロディニアはATP P2X受容体拮抗薬pyridoxalphosphate-6-azophenyl-2,4-disulfonic acid(PPADS)により抑制された, 5.PAF誘発アロディニアはNMDA受容体MK801およびNO合成阻害薬7-NIにより抑制された.これらの結果よりPAFは強いアロディニアを誘発し,その機序にATP P2X受容体,NMDA受容体,ならびにNOを介する系が関与することが示唆された.
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